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■ 労働十三戒 | 2017. 6.15 |
これは自分に対しての戒、即ち仕事をするにあたっての自戒である。 医者は何のかんの言っても労働者である。 技術を持った労働者という意味では散髪屋さんに似ている。 まさに頭数がビジネス上の勝負となる。 多少各専門家や、やり方によって単価が異なるとはいっても頭数の重要さがおろそかにされることはない。 特に開業医の場合、毎日毎日、朝から晩まで、時には深夜早朝や休日にも“労働”をする羽目に陥ることが或る。 やれやれご苦労なことである。 暇な時にもこれまた昔のタバコ屋の店番の小母さんよろしくデスクの前か休憩室とか院長室でじっと患者さんが来るのを待つわけであるが、これまた別の意味で疲れる。 そこで自分なりに35年間外来に座り続けて知らず知らずに身につけた工夫を戒めの表現で記してみたいと思う。 1)守秘義務について 職業上知り得た秘密を正当な理由なく他人に漏らしてはならない。 これって当たり前ですよネ。 2)義務感を持たない 倫理観とは違う。 妙に気張って義務的に仕事をすると疲れる。 出来れば楽しみ、娯楽と思えるくらいの心理的工夫をして良いと思う。 「〜ねばならない」という考えや言葉は厳禁だ。 あくまで心理的に。 3)積極的に休むことをためらってはならない。 休むこと、遊ぶことも仕事のひとつと考えて堂々と休養することである。 4)ハラスメントに用心しなければならない 言葉や態度、ふるまいによるセクシャルハラスメント、パワーハラスメント、ドクターハラスメントには心を配ることが大事である・・・とは現代の常識である。 5)言葉遣いはあくまで丁寧に 決してぞんざいな言葉は使わない また、たとえばタメ口とか方言などもできるだけひかえている。 6)身なりを整えて これは礼儀礼節の大切な要素であるので、常に身ぎれいにしていなければならない。 年令が上がるとさらに要注意だ。 筆者の場合、考えるのが面倒臭いので大概スーツにネクタイで出勤し白衣をはおるというスタイル。 7)処置、検査、処方は細心の注意を払って これまた当たり前のことであるが、疲れていたり患者さんが多かったりすると雑になりやすいので要注意だ。 これが一番重要かも知れないがこれを最初に置くととても精神的に疲れるので細心の注意という言葉にとどめたい。 8)笑顔と挨拶を心がける 実はこれが一番難しい。 医者は慣れていなのでついつい考えているとムツカシイ顔、表情になってしまう。 人間関係の最も大事なとっかかりなのにである。 9)リラックス 逆に表現すると緊張してはならない。 緊張すると相手(患者さんやスタッフ)に敵意がある、恐れがあるとみなされてしまう。 以外に大事なことだ。 10)決して尊大な態度をとってはならない エラソーではイケナイということだ。 時々とても尊大な医者がいると聞く。 またそういう医者を好む患者さんもいるらしい。 尊大だと立派に見えることがあるらしい。 けれども筆者の場合、自己嫌悪に陥るのでこういう態度は身につけないようにしている。 11)生活の為に労働をしてはならない 実際はそうかも知れないが、そのように出来るだけ思わないで自分の趣味、楽しみと思うようにしている。 「仕事は好きでしている」と思い込むようにしている。 或る意味で自分を騙すこと・・・、自己欺瞞が含まれているとも思えるがそれでも構わない。 イヤイヤ仕事をしているという感覚だけは持ちたくない。 親から授かった、ありがたい良い仕事だ。 国からたいそうな医師免許という国家資格まで拝領してさせてもらっている素晴らしい仕事である・・・と時々自分に言い聞かせるようにしている。 ・・・でないとすぐに忘れてしまって怠けようとする。 ・・・人間だもの。 12)自分の存在で家族を含め職員の人々、患者さん、その家族、取引先を豊かに幸福にしていると思い込むようにしている。 これもしっかりと自分に言い聞かせないと忘れてしまう。 少し大袈裟なくらい自分を誉めてやると精神的にとても良いらしい。 13)四耐を学ぶ 四耐とは、 耐冷:人が自分に冷たいことに耐えねばならない 耐苦:苦しいのに耐えねばならない 耐繁:忙しいのに耐えねばならない 耐閑:ヒマにも耐えねばならない これら四つに耐えることは人生の学びになるらしいし労働上の指針にもなる。 ・・・と、こんな感じで働いていると一日が短く感じる。 有意義に労働時間を過ごせたようにも思える。 ケビン・クライン、シガニー・ウィーバー主演の「デーブ」という映画がある。 仕事を斡旋するのを生業にしている男が大統領のソックリさんで、替え玉としてパーティーに出席していたら本物の大統領が脳卒中で倒れちゃって実際に大統領の職務を本物よりも立派に全うして“本物の大統領”と冷えた関係にあったファーストレディと恋に落ちるという物語で、主人公が「今日は水曜日、働く日〜」と大声で叫ぶシーンが何度も出てくるが「仕事」というものの価値と有難さをあらためて良く感じさせてくれるとても良い映画だ。 蛇足ながら・・・ご参考までに。 ありがとうございました M田朋玖 |