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■ 内科開業医の診断と治療@カゼ | 2008. 3.14 |
カゼの治療は簡単なようで難しい。 内科開業医における最もポピュラーな病気だ。 「風邪は万病のもと」と言うが、色々な意味がある。 第1に、風邪を放置していたら気管支炎とか肺炎とか脳炎とかの色々な病気に「進展していく」と言う意味。 第2は、風邪のような症状を来たす重い病気があって、それ「隠れている」と言う意味。 第3には、風邪をひきやすいとか長びくというのは、体が過労やストレスで弱っている。つまり、「免疫力、抵抗力が、落ちている」と言う意味。 第4には、風邪をひきやすくする体の状態を作り出す病気。たとえば、糖尿病とか白血病とかエイズとか抵抗力、免疫力を低下させるいくつかの病気の存在があるという意味。 第5には、流行性感冒、つまりインフルエンザを代表する流行性の風邪の存在。 第6は、食べすぎ、薄着(寒冷刺激)。乾燥も良くない。 第5と6は万病と言うより「万人の病気」と言う意味に近い。 一言で言うなら「風邪をひく」という状態は、何らかの理由で「体が弱っている」ということを示している。 「子供の風邪」 これは、大人の風邪と意味が少し異なる。 風邪の原因となるウィルスはいくつかの種類があるので、予防接種でカバーできないウィルスに対して、予防接種的に免疫をつける作業を自然にしていることがある。 だから、保育園とかの託児施設に1才から3才くらいまで預けたりすると、殆んど例外なくつき1回は熱を出すということが良くある。 これは、親の管理が悪いとか、体が弱いとか、施設の管理が悪いとかいう問題ではなく或る意味で至極自然なことだ。また親の「管理」というより「対応」に問題が潜んでいることもある。 それに、例外もあって、白血病などの小児癌の症状であったりもするが、これは極めて稀なケースである。 保育園にいかなかった子供の場合、小学校に上がってからしょっちゅう「熱を出す」というような、風邪の常習者になるが、これとても決して体が弱いというワケではない。 大人の風邪は、先述した「万病のもと」の頃を参照していただくと良いが、大きく3つの風邪のタイプがある。 @ストレス、過労状態、もっと言えばうつ状態。 これは、免疫抵抗力の落ちた状態。 ウィルスに対して、感染しやすくなるという素地と、寒冷刺激 もストレスであるが、寒いと血管が収縮して喉の血流が悪くな り、口の中の細菌の咽喉頭へ感染しやすくなる。 A食べすぎによるエネルギー過剰によるもので、特に炭水化物や 肉魚類など、アルコールもそうであるが、カラダが酸性化して 病原体の進入に対して弱くなっている状態。 B流行している風邪に、単純に伝染するというケースである。 しかし、このタイプですら@Aのようなカラダの弱った状態が無ければナカナカ風邪にかかることは無い。 「バカは風邪をひかない」と言うが、これは或る意味正しい。 くよくよしない、ノーテンキで考え事の少ないお気楽な気分の人物はあまり風邪をひかない。 まじめで頑張り屋のうつ病タイプはよく風邪をひくだけでなく、概ね2年くらいの長期間の免疫力の低下により癌になることもあるらしい。あまり真面目な人は要注意だ。 体内で発生している癌細胞は、自らの免疫のチカラで絶えずやっつけているのだ。 心理検査などでも、癌患者とうつ病の人はよく共通している。 癌で死ぬというのも、うつ病で自殺するのも、結果として「早すぎる死」、「突然の死」であるからよく似通っている。 憂うつで暗い人は風邪はよくひく。 そして、付け加えるならば「感情の鈍い」人も結構風邪をひく。 自分のカラダの調子や状態に対して鈍感なためだ。 風邪の予防 @まず、うつ状態にならない。 気分を明るく保ち、悩みを持ちすぎない、考えすぎないこと。 意識して「バカ」になれば良い。 A食べ過ぎない。 「腹は八分目に医者いらず」だ。 「腹六文目に病知らず」ともある。 特に肉や魚や甘いものなど酸性食品は控えたい。 野菜や果物を多くとるとひかない。 B水を多く飲む。 便秘をしない。 気分も体調もスッキリしたい。 C手を洗う。 うがいも良い。 伝染性の風邪には特に良い。 Dマスクをつける。 これは人にうつさないという意味でもあるが、精神的な安心感 にもなるし、口に入れるものを何となく制限するという意味も ある。 「病は口より入る」だ。 E風呂上りの注意 長い髪を濡れた状態にしておくとか、湯冷めは避けたい。 F東洋医学的知識であるが、風邪は風門という首の後ろと背中の 上半分から入ると考えられているので、襟のあるシャツやマフラーなどをして暖かくしておくか、風邪のひきはじめにドライヤーで風門のあたりを暖めるという方法もある。 風邪の治療 病院に行く。 病院もあまり大きな病院では治らないことがある。 小さな親切な経験豊富な開業医が良い。 早く治さないと評判が落ちて患者が減るからだ。 点滴、抗生物質、鎮痛解熱剤、ビタミン剤、抗アレルギー剤などいずれも良く効く。 また、漢方薬で体を暖めて免疫抵抗力を高める薬もあり便利だ。 大学病院とかの大病院では先述の治療をされず、PL顆粒とか言うどうでも良いような総合感冒剤などを出されて、チットモ楽にならない。 インフルエンザの治療はタミフルとかリレンザとか、抗ウィルス剤が開発されて良く効くからあまり心配はいらない。これは全国共通どこに行っても同じ治療を受けられる。 下痢嘔吐とかの症状も合併するので、脱水予防の意味でも解熱の意味でも点滴は極めてよく効く。 追記@ 普通の風邪は早めに治療すればする程、治りもはやく、ヤヤコシイことにならないですむ。 普通の薬局の感冒薬や、病院の一般総合感冒剤も一定の治療効果があるが、重くなると無効のことがある。 追記A 以上のような状況であるから、小児科医はとても忙しい。子供は熱発するし、時には熱性けいれんとかもあって、経験の少ない親が心配して、深夜に病院にかかるからだ。 真実は、小児科の病気では、重い病気は意外に少ない。ただし、3ヶ月未満の乳児の場合「脳炎」「髄膜炎」などになりやすいので要注意だ。「血液脳関門」というのが未完成で大人より容易にウイルスや細菌に感染し易い。3ヶ月未満の子供は母子ともに外出せずに家にこもっていることだ。 追記B 「女を診たら妊娠と思え」医者の教育で口を酸っぱくして言われるが妊娠初期には「感冒」様の症状をていするのでこれも注意がいる。 「人を見たらドロボーと思え」 警察官のころろ構えに語呂が似ている。 たくま癒やしの杜クリニック M田朋久 |