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■ メローなブルースにしてくれ | 2023.10.11 |
「スローなブギにしてくれ」なる小説があって、1970年代に大ヒットして映画化もされ歌まである。 それぞれ片岡義男(小説家)、南佳孝(歌手)、藤田敏八(映画監督)の作品である。 それにあやかって上記の表題を掲げてみた。 真夏の海辺のホテル。 大きな窓ガラスが美しく晴れわたった「ロングビーチ」を広々と展覧され、その光のコントラストで店内がひどく暗く見えるカウンターバーの片隅に坐って「水」を飲んでいる男一人。 長目にカットされた銀髪にサングラス。 白いスーツに白黒コンビのスニーカー。 黒いニットのポロシャツに革紐のチョーカーが首元を飾っている。 白いドレスの女が小さなハンドバッグを携えて入店して来た。 そのまま真っ直ぐに男の元に歩み寄り隣のスツールに陣取った。 男の顔を覗き込み、皮肉な笑みを浮かべた。 ピンクのルージュが艶々としてなまめかしい。 男は窓の外の海を眺めつづけ女の視線を無視した。 女は頭をキレイに撫でつけた若い男にカクテルを注文した。 モヒート。 ロングタンブラーになみなみと注がれたドリンクを右手で喉の奥に一気に流し込んだ。 それでもコップには半分ほど残っている・・・。 ・・・と、こんな調子で「小説」を書き始めたもののマトモナ物語が生まれない。 何も考えないで小説を書くのはドダイ無理なハナシなのだ。 それでいつものエッセイに切り替えて再び筆をすべらせている。 そもそも「メロウなブルース」などというジャンルの音楽があるのであろうか。 スロー店舗でマイナーな曲目が多いのか筆者の好みの音楽はアップデンポでウルサイ音を好まない。 それこそメロウ・・・この言葉の真の意味はよく分からないけれど・・・」たとえば「ボズ・スキャッグス」のスローなミュージックを選べば「まさしく」「そのとおり」という感じの音楽に出会うかと思える。 秋の夕暮れは早い。 仕事の終わる頃・・・6時・・・にはすっかり夜の帳が下りている。 秋の夜長は歌と読書だ。 行きつけのスナックでいつものカラオケに興じるもよし、小さな読書灯の下で静かに読書にふけるのもよし。 仕事と毎日の生活をめいっぱい楽しんでいる・・・という自覚があって人生の喜び事を全て享受している感覚もあり、イギリスの統計局の出した「ハピネスカーブ(幸福曲線)」の解答どおり65歳〜69歳は人生最高度の「幸福の時」なのだ・・・としみじみ思う。 さまざまの努力や工夫が実り、概ね順調に見える自らの人生も振り返って見れば「楽しかった」ことばかりに感じるのは単なる記憶の錯誤錯覚な訳ではあるまい。 大変な大金持ちでもなく、さりとて貧乏という訳でもない。 どちらかというと平々凡々たる人生にも思えるが、毎日の生活の瞬間瞬間をコマ送りのフィルムのように捉えれば、こんなに心楽しいコトはないとも思える。 メーテルリンクの小説「青い鳥」も幸せというものは「瞬間」と「運命」にある・・・と言うメッセージを持っているらしい。 自分の人生を全受容してそれらの全てを「運命と捉え」「瞬間を生きる」と一瞬で幸福になれるのではないかと最近時々考える。 そう・・・「メロウなブルース」なのだ。 言葉のままに深く意味など追求せず「只生きれば」・・・それだけで良いのだ・・・。 書きかけのほんの短い文章でも「小説」と言えなくもない。 ・・・などとノーテンキに考えたりもする。 ありがとうございました M田朋玖 |