コラム[ひとくち・ゆうゆう・えっせい]

コラム:ひとくち・ゆうゆう・えっせい

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■ 雨2023. 6.22

鮮やかな緑にそぼ降る雨が木枝を濡らし、したたる雨粒とリズミカルなワイパーの動きと相まった6月の黄昏れ時は、個人的には年間を通じて最も深い情緒を催す時候だ。

Junebride(6月の花嫁)と言う言葉もある。
また♪雨の日の花嫁は幸せになる・・・と人は言う♪という歌もあったりする。
6月に恋仲は深くなり結婚に至るほどの付き合いに発展することが個人的にもそういう経験は多い。
やっぱり6月は特別な月なのであろうか。
紫陽花には炎天は似合わない。
やはり雨だ。
ドシャ降りでも良い。
激しい「通り雨」に打たれてふるえている。
紫陽花の花びらと緑葉ほど風情豊かな光景はない。
それを目の片隅にチラチラと見ながらゆっくりとクルマを「歩かせている」時、或る種の陶酔感を伴った悦楽を感じる。
それは昔の日本映画の香り。
春のおとずれを告げる「遠雷」と同様に人生の日常の味わいを心地良く心に響く雨音だ。
盲目の音楽家・筝曲家の宮城道雄はこの世界で最も美しい音は「雨音」だと言い切っている。
実際にYouTubeなどでも雷雨や雨音を良質な睡眠を誘う・・・として流しているが、結構視聴数を集めている。
あらためて雨音に聴き入るほどヒマ人ではないが、雨そのものもそれほど嫌いではない。

地球上にも適当な降雨と湿暖な気候と海と美しい浜辺は所謂「パラダイス」の特徴でもあるが、日本だけでなく世界中のロマンス映画に雨は欠かせない。
それは主人公の悲しみと孤独を表現する背景として抜群の効果を発揮する。
先年自殺した竹内結子の主演映画「ストロベリーナイト」では映画のエピローグ以外すべて雨のシーンであった。
また椎名桔平主演の日豪合作映画「レイン・フォール」はその名のとおり終始雨が降りつづけ、これまたエピローグには晴れていた。

このように雨を効果的に使っている映画は数多いが、印象的だったのは北野武監督の「座頭市」。
晴天のような明るさに雨を降らせるというコトをやってのけたがこの殺陣のシーンとしては名場面と言っていい。
後世に語り継がれるかも知れない。

これらの映画シーンのすべてに「緑」が添えられている訳ではないが、雨を見ると日本人の場合どうしても「緑葉」と結びつけてイメージするのではないだろうか。
田舎住まいで梅雨の雨と同時に瑞々しい新緑と紫陽花。
それらをツラツラと眺める時、個人的に少しの悲しみを含んだいくらか沈鬱な感情を味わう。
父の急死は昭和53年6月30日。
当日は夜からの雨で東京から帰郷した時には自宅の生け垣にズラーっと並んだ花輪と白黒の幕布で「父の死」を知ったのであるが、北枕で床の間に寝かせられた父の遺骸の脇に手をついて一晩中涙を流した。

そうしてその後平成20年の11月27日。
人生で最も愛した女性の一人が42歳の若さで急逝した。
ひどく寒い晩で、夕方からの雨が降りつづいていた。
通夜の晩、自宅につづく道路の傍らに冬枯れの景色が広がり心の寂寥を強く感じさせられた。

ありがとうございました
M田朋玖



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