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■ クルマ道楽 | 2023. 3.16 |
19歳から20歳頃、今の暴走族のハシリみたいな連中との付き合いがあった。 その中でもひときわ目を引いたカッコイイ先輩(年齢だけ)の男がいて、名前を「スケちゃん」と呼ばれていた。 本名は知らない。 その彼の愛車が微妙なワインカラーに塗り替えられた新開発のロータリーエンジンを搭載したマツダカペラだった。 その丸みを帯びた流麗なフォルムは先日旧車の展示会で発見した時には感動的に美しく懐かしかった。 当時「スケちゃん」ともう一人、同じ車種のクルマに乗っていた自分と同年の男がいたがその彼のカペラは色が白。 それも美しかった。 昭和40年代の熊本市内の夜の道路は今と比べ格段に空いていて飛ばし放題であった。 「暴走族」とは言え現代のソレとは違い集団で悪さをすることもなく、キチンと赤信号では止まり、ただただひたすらスピードを出すだけであった。 その上「族」と言ってもせいぜい10台かそこらの集団で実に大人しいモノであった。 それで彼と彼の愛車マツダカペラを思い出すと何故か元気になる。 それでも出始めのロータリーエンジンは燃費がひどく悪くてリッター3〜4km。 それでそこらじゅう走りまわるので月のガソリン代が半端ない。 当時リッター40円の時代に彼の月の油代が40万円とか・・・。 聞いていて痛快でもあり仰天モノであった。 運転の技術も相当に上手で、街路をサーキットのように高速で駆け抜けて小さな接触も含め事故ひとつ起こさなかった。 それでそのコツを聞いたところ彼の人曰く 「車間距離を決して詰めないこと」だと。 割りと常識的な返答であったのでその顔相と一見乱暴とも言えるクルマの走りから考えると当然ながら少々「違和感」があった。 その当時、彼(スケちゃん)はあきらかに自分たちのスターであり主役であり圧倒的なカリスマ性で集団を魅了していた。 数年前にその消息を知人に訊いたところタクシーの運転手をしているとのことであった。 不思議なほどよく適合した職業だ。 少なくともトラックドライバーよりも・・・。 その性質は元々善良で気の良い男であったのだ。 当時より無事故無違反のドライバーだったのだから。 そんな熱い時代の強い憧れというモノはナカナカ衰える性質ではなくて、思い切り自由でのびのびとした良い気分の時にそれらの思い出が自然に心に湧き起こる。 今は大人しい走りをするソアラ430という古いクルマで相当にジェントルなクルマを所有し運転しているが、この自動車もまた蕩けるように走りが心地良い。 燃費もロータリー車と比較するとそれほど悪くはない。 色も濃いパープルで「スケちゃん」のクルマと少しカブる。 そんなどちらかというと大人のクルマを駐車場から引き出して夜の街を気ままに「流す」時には「至福の時間」だとその時点で心から思う。 年代が違うのだ。 キチガイのように車で飛ばせる時代は終わった。 しずしずと重々しくしとやかに走る。 ソアラ430ほど自分にマッチしたクルマはそうそうあるまいと思える。 それでも極限まで軽量化されハイパワーのエンジンを搭載した軽快なスポーツカーを乗りまわしてみたいという欲求もある。 それで当面欲しいクルマと言ったら0〜100kmの最も速いとされるホンダシビックだ。 やれやれ買おうと思うとすぐにでも買えるのであるが・・・。 イマヒトツ心が動かないのは現状に満足しているからだ。 「今を楽しむ」「ありのままを楽しむ」為には余計な欲求や願望など邪魔でしかない。 道楽と言っても極めると「満足」が必須だと思う。 ありがとうございました M田朋玖 |