コラム[ひとくち・ゆうゆう・えっせい]

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■ 国家の衰退2022. 3.15

2021年現在、過去10年間で最も引用された政治経済の論文はトルコと米国に国籍を持つダロン・アシモグルだ。
現在マサチューセッツ工科大学の経済学教授として在籍する同氏の「論」は解りやすく説得力がある。

即ち豊かに発展する国と貧しく衰退していく国の比較では文化、気候、国土、地理的要素、歴史など気候環境的要因は殆んど無関係でその国の政治経済の「制度」に準拠するとしている。

衰退する国家は総じて「収奪的」政治経済制度を有しており、多くの軍事独裁国家・共産主義国家(現在中国・ベトナム・北朝鮮・キューバ)、社会主義国、その他の専横的絶対王政など限られたエリートに権力と富が集中する国家としている。
一方で豊かな国、繫栄する国である「衰退しない国家」は「包括的制度」を持っていて、それは参政権が広く開かれ法の支配が確立し個人の権利や所有権も保証されるなど権力が社会に広く配分されている民主主義的、市場主義的制度である。
この政治制度の下では権力者による搾取が行われず大多数の経済活動に参加でき、社会の変革(イノベーション)を起こすインセンティブ(報酬、見返り)のある社会である。

前者(収奪的制度)では既得権益者が富と権力を独占維持する為に制度が自分たちに都合良く「歪められ」個人が正当な努力で富を得る機会が著しく制限される。

要するに国民のモチベーション(動機づけやヤル気)の問題が国家の繁栄に最も重要で、公平平等を第1政治制度目標にかかげている。
共産主義や社会主義などの制度の中では国営企業・集団農業・計画経済などが施行され「働いても働かなくても同じ」「頑張っても所有権・私有権が手に入らない」など著しく個人と企業のモチベーションが引き下げられた結果、農業産物・工業産物のいずれもその量と質において市場主義・自由主義経済のそれらプロダクツより相当に「劣る」という子とが起こってしまう。
このことはソ連やかつての中国のそれぞれの巨魁、即ちスターリンや毛沢東の用いた政治経済の失敗(数百万人規模の大量の餓死者を出した)によって証明されている。

統計的に経済の行き詰まった「ソ連」は1990年代に完全崩壊し中国でも国家の指導者となったケ小平が1978年に施行した「改革開放路線」という歴史的政策転換が図られ、以降一部市場主義経済が取り入れられ今日の中国の驚異的な経済発展を見ている。
しかしながら習近平氏が国家主席となり毛沢東以来となった「共同富裕」などという平等主義が唱えられるようになった。
ついで独裁主義的色彩が強まり「包括的制度」に向かう・・・即ち欧米諸国から見ると「民主化」に向かうと期待されているところ急旋回して「専横的」色あいが再燃し、それに同期して経済の停滞現象が少しずつ生じてきている。
これら一連の近々の歴史を振りかえってもダロン・アシモグル氏の論が証明されていると考えられる。

「収奪的制度」「包括的制度」の歴史と国々を少しまとめてみると国家の衰退した例としてスペイン帝国・オスマン帝国(トルコ)・オーストリア=ハンガリー帝国・ロシア帝国・中国などがあり「包括的制度」で繫栄している国家の代表としてアメリカ合衆国・産業革命に成功したイギリス(名誉革命によって立憲君主制が成立した)・フランス(フランス革命)・ドイツ・日本(明治維新)などがある。

一党独裁のうえに一人の独裁者の存する中国・ロシア・北朝鮮、他にいくつかの独裁国家の先行きは「衰退」ということになるのかも知れない。
件のアシモグルによれば米国や西欧(イギリス・フランス・ドイツなど)に比べサハラ砂漠以南のアフリカ諸国、中南米(メキシコ以南)では歴史的に強制労働をはじめとした収奪政治制度の後遺症があり、どうしても国自体の貧国傾向がつづいているとのことで、たとえば米国とメキシコの両方にまたがる「ノガレス市」においては同じ先祖、同じ風土を持つにもかかわらずその富裕度において天国と地獄ほどの差異があるとのことであった。
隣接した両国(米墨)には政治制度について国際的な見地から考えられているより激しい違いがあるようである。

ありがとうございました
M田朋玖



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