コラム[ひとくち・ゆうゆう・えっせい]

コラム:ひとくち・ゆうゆう・えっせい

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■ 初夏の夜風に吹かれて2021. 5.26

俳優の田村正和氏が今年(2021年)の4月に鬼籍に入られたらしい。
享年77歳。
今時では若死にといえるかも知れない。
芸能人はどちらかと言うと短命になる人が多い。
その職業柄、自然的に派手で賑やかな飲食にその因があるのではないだろうか。
田村氏にその傾向があられたとは聞いていないが「ゴルフ好き」ではあられたそうで、やはり交流を通じて親しい友人が幾人かおられた筈で御馳走がお好き、すなわちグルメであられたとも何かの本に書いてあったのを思い出す。
真偽は定かではない。
自らの私生活は厚いヴェールに包んで公的につまびらかにされることは無い人物のようだ。
筆者の大学入学時(20歳頃)ちょうど30歳だった田村正和氏の特集記事が或る雑誌に掲載されていて、その写真の容姿の良さとクルマ趣味(愛車はコルベットスティングレー)と音楽の趣味(バリー・マニロウ)を知り、当時から時々その米国人シンガーソングライターの作品を聴くようになった。

同氏はその音楽を聞きながら車の運転をするのが「好き」とのことであった。
デッキシューズ(ヨットマンの履くキャンバス地の靴)に紐を通さず履いて当時流行のパンタロン風のスラックスに細身の長袖シャツを着て少し猫背気味で夜の街にたたずむワンショットはとてもカッコヨク見えたものだ。
その後はテレビドラマ「古畑任三郎」シリーズ、「眠狂四郎」で拝見した時にはいかにもハマリ役。
彼以上の適役はいるまいと心の底から確信したものである。
刑事コロンボ役のピーター・フォーク並み・・・と思える。

それで偶然にもその死を知る前にフイに懐かしさを求めてバリー・マニロウを聴き、歌っていた最中での訃報。
なんと4月に死去されていたとのこと。
発表が後日になった「いきさつ」についてはコロナ騒動も因していると思える。
タレント・志村けんのいかにも淋し気な葬儀の模様を正和氏の関係者や親族が知るにつけ死亡発表を渋ったものと考慮される。
今時の「死」はタイムリーなのか否か不明だが本来盛大であるべき人気俳優のご葬儀がもしかしてコロナで「淋しかったら」個人もさぞ残念に思うだろう。
そんな風に見えない一見孤高でニヒルなイメージと異なり笑わせ上手で社交を好む楽しい飲酒家だったのではないだろうかと勝手に推察している(この文章はあえてWikipediaを読まずに書いている)。

田村正和という俳優さんは筆者における実在の大スターとしてはアラン・ドロンと双肩をなす存在で、その「イメージ」は個人的に相当に精神的エネルギーを頂戴しており、その「死」は或る種のノスタルジックな甘い感情の喪失を心の中に感じさせるレベルである。

都会の夜風に吹かれて夜の街を、それこそ白のスニーカーで軽やかにゆっくりと歩きながら20歳から30歳頃までの思い出に浸っていると、バリー・マニロウの歌がどこからともなく流れて来て思わず落涙した。
それは「悲しみ」と呼ぶべき類ではなくノスタルジー(郷愁)に似た不思議に豊かな感情で「帰り来ぬ青春」への限りない恋着のようで、悩ましく狂おしい「熱情」のようなものであった。

ありがとうございました
M田朋玖



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