コラム[ひとくち・ゆうゆう・えっせい]

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■ 映画あれこれ2020.12.24

ここ1カ月あまり同じ映画を毎日観ている。
よく飽きないものだと自分でも感じる。

「いつかどこかで」

シンガーソングライターの大御所、小田和正の第一回監督作品。
1992年に公開されまあまあヒットしたらしい。
しかし批評家達の口は辛く徹底的にコキおろされたらしい。
以来、映画についてのご本人(小田さん)論評は控えておられるようだ。
どんなことを言われたのだろうと想像するが個人的には同作品はベスト・オブ・ベスト。
世界最高レベルの傑作となっている。
黒澤明的完璧な映像とトリミングと音楽で筆者をいつも必ず癒やしてくれる。
何回観ても鑑賞に堪えうる映像と音楽で、重要な部分であるが「観たくないシーン」がひとつも出て来ない。
嫌な気分になる、白ける、気持ち悪いなどキタナイ場面も全くない。
都会と自然の美しさ、軽妙でコミカルな会話など完璧な仕上がりになっていて、試しにストップモーションをかけて見つめても絵画的な構図、優れた画家的センス。
見事な出来栄えである。
全然退屈しない。
対極にあるのが是枝裕和監督。
とにかく画面がキタナイ。
これでもかこれでもかと人間の惨めさ、醜さ、悲しさなど生活感が音と映像で剥き出しにされる。
こういう映画を好まない。
筆者にとって映画は夢でありファンタジー、心を癒やす最高のツールであるのだ。
愛と慰めと癒やしを求めているのに敢えて嫌悪や怒り、気持ち悪さや不快さを映画から得たくない。
所謂ハラハラドキドキはノーサンキュー。
また無用な緊張も得たくないのでとにかくスッキリして美しくキタナイ映像の全くない「いつかどこかで」は筆者にとってエバーグリーンであるのだ。

物語も脚本も担当しておられるのは全て小田和正氏のオリジナルらしいけれど素晴らしく好感だ。
若い男の献身、無償の愛、心を閉ざした女性のヒロイン・・・この構図だけでも心癒される。
「男の生き方」の参考になる。
好きな女性に対する無条件の自己犠牲的愛と献身。
精神的動揺が少なく安定しているパーソナリティー。
明朗快活、サッパリとした気性など主人公・正木まもる役の時任三郎が素晴らしくカッコよく見える。
心を閉ざしたヒロイン。
これも魅力的だ。
トラウマのある女性は不思議なことに多く美しい。
そのトラウマが深く大きいほど・・・。

この組み合わせ物語は筆者の心によりマッチするようで「いつかどこかで」が個人的な作品の最高峰に君臨しつづけているのもよく理解できる。
自身のトラウマ。
筆者自身が女性のヒステリー・ワガママ・自己中・・・に対し強い親和性を有しており母親との相性を分析すれば当然のこととも思える。
この作品はさらっと一回見ただけでは内容が掴めない。
それほどテンポが早い。
何回か観賞していると良さがハッキリしてくる。
細かいディテールに小さな行き届いたサービス精神が散りばめられていて楽しめる。
女性美を映像の随所に発見することが出来てこれも嬉しい。

好きになる理由。
これは不明。
嫌いになるには理由がある。

これらの絶妙な組み合わせで人間の恋が始まる。
そして終わる。
恋に落ちる二人には「理由」など殆んど無い。
婚活などで打算計算の相手への条件設定などいかにも恋愛にそぐわない。
そういうことを考えた時点で「恋する男女」の資格を喪失すると思える。
大昔から言うではないか。

「恋は盲目」と。

盲目で阿呆にならないと恋はできない。
そんな素敵なバカや阿呆になっている。
主人公・正木まもるは個人的独断的見解ではまさしく典型的なヒーローなんである。
心から共感し賛同する。
「カッコイイ男はかくあるべし」

それがキチンと描き込んであって制作者である小田和正もそういう人物なのであろうか。
その傲岸不遜な言葉づかい、ふるまい、態度で嫌われているらしいが彼の人の生み出す作品はどれも素晴らしい。
少なくとも筆者の心に良くフィットする。

DVDも勿論ブルーレイも出ていない。
VHSのビデオテープでしか映画「いつかどこかで」を入手することはできない。
友人の電気屋さんに依頼してVHSテープをDVDにおとして貰い毎日観賞しているので画質が悪い。
これをブルーレイで観たらさぞや美しいであろうと思う。
是非とも小田さんにはこの作品をデジタルリマスター版かなんかで「リリース」して貰いたいものだ。
ごく個人的な秘そやかな願いだ。
芸術は常に人間の心を深く強く癒やす。
それらの殆んど全てを兼ね備えている作品が筆者の中では「いつかどこかで」なのである。

ありがとうございました
M田朋玖



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