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■ 私腹を肥やす | 2020. 6. 1 |
これは誰でも犯しやすい人間の性向だ。 庶民の「ヘソクリ」なども厳密にはこれに含まれるかも知れない。 多くの政治家・起業家にはこの手の行為を当然の如くなさる方も多い。 世界中におられる。 以前「パナマ文書」という暴露文書が公開され多くの国家元首や超富裕層の巨額蓄財が公けになった。 それも税金逃れ。経営者ならいざ知らず政治家が税金逃れなんて。単純なドロボーより質が悪い。 幸い日本国の政治家にはこのリストに載った人物はおられず、国内ではあまり問題にはならなかったようだ。 昔から立派な政治家は「井戸塀議員」と称されていて政治を志し、それを「業」にする人は政治活動に「持ち出し」て財産を失くし家には「井戸」と「塀」しか残らない状態になるそうだ。そのことを端的に庶民的に表現した言葉である。 実際に明治の維新政府の要職にあった大久保利通など身分を利しての蓄財をした形跡は全く無く、他界した後借金しか残らなかったそうだ。 江戸時代の武士(明治維新政府は薩長の下級武士が築いたとされる)の潔く美しい心根が透かして見える事実だ。 即ち「恥」の文化。 「武士は食わねど高楊枝」などいくら貧しくても誇り高さや「恥ずかしいことはしない」という強烈な意気を感じさせ好感を持つ。「同郷で薩摩の出身の西郷隆盛も同様で、自らの生命さえも公心の為(維新政府に冷遇された武士達の不満を背負って)捧げた。 言うならばラストサムライは彼の人を指すようだ。 西郷さんを「私腹を肥やした人」とは誰も言わない。 実際に清貧に徹し官職を辞し「敬天愛人」を貫いた人物として地元鹿児島県のみならず日本中の尊敬を集める偉人とされている。 けれども西南戦争によって「逆賊」の誹りを免れることはなく靖国神社には祀られておらず、勿論征韓論の推進者として韓国での評価は同様の実践行動をした豊臣秀吉と共に芳しくない。 世界的には「私腹を肥やす」ことに恥じらいを持つ人が少なくなった感がある。 M&Aと称する会社の売買を通じて巨額の富を手にするのはビジネスオーナー(会社の持ち主)でありその親族であったりする。 これは従業員やその家族の諸事情を無視しており、一見非人道的に見える。 勿論、事業継続や繁栄があれば別であるが。 どうしても「私腹を肥やす」とか「借金や資金繰りの苦しみから逃れたい」とかの欲求や「目先の利益に目が眩んで」のことでどんな経営者にもある、心理的な弱い側面ではある。 実際には戦略的にそういう選択をせざるを得なかった背景を持つM&Aも多数ある筈であるが、主に米国で行われているそれらの会社の買収売却劇の裏にはそういう動機「私腹・・・」があるのではないかと推測している。 その業界の凋落を見越して会社を高値で売ってしまうというアイデアは経営者というよりビジネスオーナーとしては賢明な決断と思えるが非倫理的な印象を持つ。 ブロックバスターという米国のDVD・ビデオレンタルチェーンのオーナーはネット配信や郵送でのレンタルを低価格で始めた「ネットフリックス」に顧客を奪われ自業の将来性に危機感を感じ50億ドル近くで同社を売却した。 賢いと言えば賢い。 誰も「私腹を肥やした」などとは言われないだろうけれどスピード感のある行動には、或る種の非情さが伺い知れる。 政治家で「私腹を肥やす」人物も世界中に数多くおられて「パナマ文書」に登場しておられるがここでは割愛する。 映画「バイス」はクリスチャン・ベールの怪演でアカデミー賞のメイキャップ賞を受賞したが彼の演じるブッシュ大統領時代の副大統領ディック・チェイニーの錬金術と「私腹肥やし術」がうまく描かれている。 今は立派に富裕層の仲間入りを果たしておられる。 日本でもかなりの数の政治家が個人蓄財をしておられるが末路は哀れである。 不思議なことに健康を害するか頓死されることが多い。 金丸信という山梨県選出の政治家は田中政権時代の大物領袖だった。一般大衆に対しては「綺麗事」をいっぱい述べれていたがチョットしたスキャンダルで事務所の金庫から金の延べ棒が大量に発見された。 これらの人々に共通する特徴的性向は強力な「自己中心性」と「自分のルールを勝手に作って曲げない」というモノで、筆者の研究では私腹を肥やしやすい人物は特定できるし、その代償も分かっている。 それは「健康被害」と「信用失墜」と人々の「軽蔑」だ。 それらについて平気であればどんどん私腹を肥やされたら良いだろうが「失うモノも大きい」と言わざるを得ない。 とにかく「見苦しい」。 そればかりだと。 ただし、ほんの少しのユーモアや稚気でもあれば許せる気もする。 女性や親族や友人知人に貢ぎまくったとかのエピソード。与える為に蓄財したわけで動機がかわいい。何だか幸せそうだ。 本多静六という奇特な人物は、苦労して築いた個人の巨万の財産を惜しげもなく全額寄付をした。勿論85歳という長命を得て、人々の顕彰や尊敬を受けて歴史に名を残した。 ありがとうございました M田朋玖 |