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■ RAILWAYS | 2019.12. 3 |
邦画の三部作品がある。 地味な作品だ。 結構ヒットしたようで山崎貴監督の「三丁目の夕日」と同様に数年ごとに「シリーズもの」として製作されている。 それらがR1.12.1に衛星放送WOWOWで一挙放映された。 日本人のごく普通の日常を切り取って映じて観せた映画で、派手なアクションも珍奇なシーンも展開もなく「ありきたり」「日常的」「庶民的」 一見退屈しそうな内容であるけれど作品の出来としてまずまず。 何度でも観れる佳作となっている。 個人的には心惹かれる映画で、どこが面白いかというと「懐かしさ」だ。 都会と田舎、老、病、死・・・人生のさまざまな局面を細やかに描いていて、しみじみと感動もする。 これぞ日本人の映画と呼ぶべきシリーズと思える。 物語は実のところどうでも良い。 鉄路(raiways)とその運転手を中心に、それにまつわる人々のささやかながらそれぞれの「人生」を描いていて見事と言える。 感情移入しやすい。 鑑賞後に何も心に残らない外国の只のアクション映画、サスペンス映画、犯罪映画などより個人的には「好き」だ。 とは言え、購入して何回も観るという程ではない。 微妙な価値づけレベル。 さて個人史を紐解くと鉄道については思い出が多い。 中学受験、大学受験の時にそれぞれ一度だけ父親と二人でソレに乗った。 大酒後の朝、横浜駅のホームで線路に向かって嘔吐した父をありありと思い出す。 小学校の時の家庭教師は人吉高校の生徒で真面目でアタマの良いイガグリ頭の少年であったが態度や物腰や表情が実父よりも落ち着いていて、物静かで「立派な青年」に見えた。 鉄道学校に入学が決まっていた。 当時その学校は結構難関らしく、まだ「国鉄」が民営化される前で、そこに就職することは将来を約束された「公務員」のような時代であったようだ。 中学・高校時代は熊本市と人吉市の往復はバスなどではなく常に鉄道、鉄路であった。 ローカル線の肥薩線(人吉〜熊本間の路線)で1時間40分。 熊本駅から市の東端に在する寮までは市電で40分。 片道3時間あまり鉄路で過ごしたことになる。 記憶の底に焼き付いているのか市電や電車やそれらの公共交通の「乗り物」には辛く暗い思い出といくらかの郷愁があって、それに接すると少しく「心が揺さぶられる・・・」 大概、少年の孤独と父親の思い出と。 家族で熊本市内に出かける時、父の晩年頃はクルマではなく鉄路であった。 黒っぽい上等なスーツにノーネクタイ。 当時でもオシャレなイデタチで、片手に新聞を丸めて持ち、ゆったりと歩く後ろ姿に男の哀愁と父親の威風を感じたものだ。 強い憧れと篤い信頼。 或る意味、理想の父親。 他界して41年になる。 RAILWEYのシリーズを鑑賞すると紛れもなく日本人の「父の物語」と理解できる。 鉄のように頑丈で、愚直に、まっすぐで素晴らしい威厳と愛に満ちた乗り物・・・それがRAILWEYS・・・男の生きざま、父の生きざま。 それらが多くの日本人の心を打ったのは確かなようだ。 ありがとうございました M田朋王久 |