コラム[ひとくち・ゆうゆう・えっせい]

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■ 蜘蛛の巣を払う女2019. 1.17

連休、それは「成人の日」の前々日の土曜日。1月12日。
夕方まで午睡を取った後、65歳の肉体と心を奮い立たせてバイク乗りの装束を身にまとい、愛車にまたがった。
ちょうど夕方5:00。

気温13℃。
前日からしぐれていた暖雨もやみ、夕刻には少し青空がのぞいている。
ガソリン満タン。
どこにも寄らず高速道路に滑り込んだ。
まだ路面が湿っている。「雨 トンネル出口 スリップ注意」。バイクを寝せず両膝でバイクをホールドし、上半身だけ自在に操作する所謂「白バイ乗り」。
高速の電光掲示板の不気味な点滅を尻目に、ソロソロと30kmにも満たない道程に23通もの人口洞穴を有する多トンネル高速を一路、最近隣の映画館をめざして走った。

まだ明るさを残した冬空は、黒灰色の重苦しい雲をたずさえている。それでもギリギリのところで漏水をこらえていた。

人吉盆地から山脈を縦に貫き平野に至る高速道路は、その23個ものトンネルで冬の寒さと降雨を緩和してくれる。
バイク乗りには有難い路線とも言えた。
夏涼しく、冬暖かい。

イザとなったらトンネルに設置されている非常駐車帯にでも逃げ込もうと考えている。
まだ実行したことはないが・・・。

以前ガス欠でその設備を利用したことがある。
それはディーゼル機関車で運営されている田舎の駅舎の匂いで、車の排気ガスによるものだ。
ヤニがコンクリートの壁やタイルに黒く染みついていても悪い気はしない。
そういう地下室のように暗鬱な閉所も歩道と自動車道が「通じている」という安心感からか、思ったほどイヤな場所ではない。

宇城スマートインターを通り抜け、上映時間5分前に件の映画館に到着した。
5:50分開演。
ヘルメットや荷物はパニアケースに押し込んで財布と携帯だけで入館。観客は4、5人ほど。
バイクジャケットを着たまま最後部左端に陣取り伸びやかに足を組んで鑑賞した。

映画そのものの出来はまあまあ。
何しろバイクが出てくる。
主演のクレア・フォイ(リスベット役)もナカナカの美人だ。
少し美人過ぎる。
本来の役どころは極めて頭脳明晰ながら凄惨な過去を持つ冷酷無慈悲。「トンデル」女性の筈なのに、今回は美しい容姿。誠実さや優しさを兼ね備えた若い慈母のような表情をたたえた貴婦人の趣だ。
これは間違いなくキャスティングミス。
相手役ミカエルも全く存在感の無い「木偶の坊」。
まるでディズニー映画ではないか。
脇役全員にもそれを感じる。
アメリカ人(黒人)のNSA(国家安全保障局)の男だけが少しく精彩を放っていた程度。

物語はよくまとまっていて面白かった。
しかしながら、ハッキリ言って失敗作。
Ducati・・・バイクのタンクの文字と主人公・リスベットの端麗な白皙だけ。

映画も二番煎じ、つまり続編はだいたい前作より落ちる。
アカデミー主演、助演の賞を得た前作は出演者の存在感で光り輝いていた。
何度観ても何がしかの元気を貰える作品であるし、主人公の存在感とカッコヨサがあった。
ちょうどパイレーツ・オブ・カリビアンのキャプテン・ジャック・スパロウ(ジョニー・デップ演じる)のように。

前作のリスベットは似たようなキャラだった。
破天荒(?)、ハチャメチャ(?)、欲張り(?)、摩訶不思議(?)、トンデル(?)、ラリってる(?)、暗い過去を思わせるトラウマチックな表情(?)・・・表現のできない魅力に世界中の観客・鑑賞者が見事に魅了されていた。

映画の3要素は3C。
@Casting(配役)
ACamera(カメラマン、監督)
BsCenario(シナリオ、脚本)
@だけダメだったよくある作品がこの「蜘蛛の巣を払う女」。

原作は素晴らしい。
ダヴィド・ラーゲルクランツの筆。ミレニアムの続編として書かれた作品は、文章が上手く一気に読ませてくれる。
前作は故スティーグ・ラーソン「ドラゴン・タトゥーの女」。
それを引き継いだカタチになるけれど文章も物語も異質だ。
映画は前作と原作の良さと味わいがあまり反映されていない。

「スパイダーマン」と「ボーン・アイデンティティー」の合体したような正義の味方、勧善懲悪的な物語。
主人公の尼僧のように高貴で清らかな白皙で上塗りされてスウェーデン版「必殺仕掛人」。
ツマラナカッタ。
バイクと主人公の太股だけが
脳裏に残った。

何の先入観も持たず、前作と比べて観なければ結構楽しめる作品ではある。

ありがとうございました
M田朋玖



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