コラム[ひとくち・ゆうゆう・えっせい]

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■ 万能薬2018.10.23

漢方医者の万能薬は葛根湯であるらしい。
葛根湯だけで治療をして金倉を建てたという漢方医がかつて存在していたようだ。
それくらい色々な症状に効く。
普通感冒、頭痛、肩こり、胃痛、腹痛、下痢ととにかく内科の一般症状の多くをこの汎用され知れ渡った漢方薬が奏効する。

一方世界中で広く使われている万能薬の代表はご存知アスピリンだ。
この薬はアレルギー反応が起こったり胃に潰瘍ができたりすることがあって「受けつけない」人もいるがアメリカ人の場合、どんな症状にもアスピリンという人がいて意外にうまく奏効したりするようである。
本の知識であるが・・・。
偽薬効果、プラシーボ効果というのが40%〜50%程どんな「薬品」にもあるので或る程度「効いた」という実感を得られるのであろう。
ご存知のようにアスピリンは少量使用で脳梗塞、心筋梗塞など血液循環を阻害する因子を改善してくれる。
ありふれているけれど重要な薬という側面を持っている昔からある薬だ。
一時期は抗発癌作用もあるとかでやたらに常用されたことがある。
発癌抑制力が50%(一般の服用していない人々に比べて・・・)という数字も提示されていたことがある。

子供の発熱、腹痛、不機嫌などさまざまの体調不良時に欧米を中心に「ヒマシ由」を薬として飲ませるというのが昔あったが、これは単なる下剤である。
子供の諸々の症状、たとえば腹痛の多くや発熱などが便秘によって起こることがよく知られていてこれも理にかなっている。

さらに古典的な万能薬としては「酒」がある。
これはアルコールによる酩酊とか酔うことの快楽を得る為の「食品」ではなくて純粋に薬物として使用する考え方で、この場合、少量を「気つけ薬」のようにチョット飲ませると精神が落ち着き、少し高揚し良好な血液循環を促し、活気を取り戻し、かなりの効果を得られるが勿論、大量に飲むと心身共にかなり有害な薬品となる。

大昔から酒は医者の治療薬として使用され、医の古い字体「醫」には酒の文字が一部取り入れられている。
即ち酒を「投」与して人を医やす・・・というワケである。

さて現在の医療制度における一般医の万能薬というと今や世間やメディアから「目の敵」にされているベンゾジアゼピン系の薬物のクロチアゼパム(リーゼ)、ジアゼパム(セルシン)、エチゾラム(デパス)とそれらの類似薬品がある。
これらはかつて多くの内科系開業医の常用薬でふんだんに処方されていた。
今でもかも知れない。
頭痛、肩こり、動悸、倦怠感、嘔気・嘔吐等、人間の緊張やストレスの生み出す多くの症状を速やかに取り去ってくれるとてもありがたいお薬である。
これらのベンゾ系の薬剤はその依存性の問題からかお上(行政府)より規制がかかることとなった。
依存と言ったってアルコールやニコチン、麻薬・覚醒剤からすると大したことはない。
それで暴れるとか異常行動をひき起こすワケではなく、どちらかというと大人しくなるオクスリで、漢方医の葛根湯のように言わば万能薬の部類に入る汎用薬品である。
これらのベンゾ系の精神安定剤の存在は治療者にとっても患者さんにとっても極めて便利でありがたいお薬であるのに使用を制限するとは何たることだと思うけれど、行政側からすると「頻回受診」などの患者行動を鑑みて受診抑制と医療費抑制に一定の効果があると踏んだのであろう。
タバコやアルコールは野放しであるのに医療機関で制限的に使用されている便利で治療効果の高い薬剤の処方制限をするなんて「アリエヘン」と思うのであるけれどお上が言い出すのであれば仕方なく従わざるを得ない。
医師会などでもこの問題は反対運動が起こっているらしいが今後どうなるか分からない。

筆者の父親などの世代の開業医は、この「ベンゾ」をよく出していた。
セルシン-M(胃の薬)というのがひとつの定型処方で、同様のリーゼ-Mというのを同世代の友人の内科開業医も頻用していたようである。
実際はセルシンの方が筋弛緩作用が強く、強頭痛、肩こり、気分不良にはよく効くようだ。リーゼは主に抗不安を主目的に使用する。
いずれも緊張を和らげるので血圧を下げる作用があり、降圧剤、所謂「血圧の薬」などの使用をせずに済むことがある。

ただこれらに加えてデパスとかばかりを服用する人々は抗うつ作用がないのに何となくダラダラと自分の気分に応じて服んでいる方がおり、それらの抑制には良いかも知れないと個人的には思う。デパスは依存しやすく抜けにくい。作用が強いのに半減期が短い、即ち直ぐに作用している時間が終わるからである。

上記したベンゾ系の精神安定剤、睡眠導入剤のお世話になっている多くの普通の患者さんの場合、施行される予定の処方制限は困った問題である。
社会にそれほど害悪をもたらすワケでもなく、多くのストレスと緊張を抱えているビジネスマン、OL、主婦、お父さん、お母さん、お祖父ちゃん、お祖母ちゃんを癒やしてくれる一昔前の万能薬、ベンゾ系薬物の未来に微かな暗雲が垂れ込めているように見える。

新薬の登場とそれに同期するように、野球のシーソーゲームのように繰り返される政府と業界と関係機関のご都合主義的な思惑で行われた「医療制度改革」という美名の下、さまざまな「締めつけ」が医療人と患者さん、ひいては国民全体をしみじみと苦しめている。

腹痛の万能薬は天下の「正露丸」
これは海外でも売られているらしい。
由来は「征露丸」。
即ちロシアを征伐に行くための丸薬というワケである。
日露戦争にその源を求めることができるようだ。

いずれにしても上記した「万能薬」の歴史を辿ってみると興味深い結論が導き出される。
「売れすぎると制限がかかる」と同時に「永遠に残って行きそう」ということである。
所謂、麻薬にしたって戦争とか末期癌などの極限状態では絶対必須の薬で戦時の万能薬なのである。
アフリカのソマリアなど内乱の続く極貧国では麻薬と同じ成分の野草を噛みながら生活しているそうで、特定の薬物の力を借りないと人間の幸福を味わえない厳しい環境であるらしい。実にお気の毒である。

そういう意味では酒も人類の「万能薬」であると言える。害悪も多くの人の知るところである。つまり良く認知されている。
またそれを表向きは飲めないとされるイスラム教徒が正気であるとも言い難い。
かつて米国で施行された所謂禁酒法は天下の悪法であることが歴史的に証明された。人間はどうも「懲りない」という特質を持っているようだ。繰り返し行われる戦争と同じように悪法を簡単に施行する。深く考えもせずに。

ありがとうございました
M田朋玖



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