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■ プジョー208 | 2018. 6.20 |
フランスの小型車だ。 弟が中古自動車屋から100数十万円で購入したこの車両を極めて安く譲り受けることになった。 本人(弟)が不調法をしてクルマの右側面の全部、即ちフロントとリアのフェンダー、前後のドア2枚の外装をガードレールにひどく擦って壊してしまって、いきなり醜くなった顔創を見てイヤになったのであろう。 急いで手放したかったらしく、慌てて国産車の販売店に当たったところ下取りの見積もりが絶望的に安く、売りつける先として筆者に白羽の矢が立ったのだ・・・と推測している。 板金修理に2週間ほど日数を要したが、殆んど完璧に仕上がったその小粋なコンパクトカーはバイクのように小気味よく軽快に走ってくれる。 何しろ「外車」であるのでメンテナンスや故障が心配であるが、市内を乗りまわす分は心配いるまいと毎日買い物やドライブに頻用している。 最初はダサいと思った車体のフォルムや色も国産車にない斬新なデザインで、夜に街路に停めてあると光の加減で見事なほど美しい。 カーキ色と緑と茶の合わさった不思議なボディー色も奇妙になまめかしい。 フランスの刑事ドラマに出てくる黒の革ジャンにジーンズに汚いTシャツという全体に緑色がかった地味なイデタチの刑事役の俳優さん達を思い浮かべられる「色」だ。 現代のフランス映画は原色の国旗と裏腹に「色」の殆んど無い極めて彩りのない映像が多い。 それは全体としてオシャレとか粋とかモダンとかファッショナブルとか・・・フランス「パリ」の香りのするデザインで結構イケてる車ではあった。 美術学校に通った画家志望の弟らしい一風変わった車のチョイスは極めて平凡な感性しか持たない筆者からすると驚きである。 それでもこの車をいたく欲しがる40代後半の男の友人もいて、その欲求に応えるべく替わりの国産のコンパクトカー何台か試乗してみたがフィーリングとして何か物足りない。 即ちプジョー208の楽しさのレベルに届かない。 何とか及第点に達したのは意外なことにマツダのデミオであった。 総合的なパフォーマンス、つまり居住性、燃費、走行感覚、デザインではプジョー208に相当勝っているとも言える。 もともとヨーロッパテイストの作品である「マツダコンパクト」のフラッグシップでもある「デミオ」の出来はまずまずどころか個人的な感想ではかなり秀逸であった。 ただ国産の売れ筋のクルマということで、街中でやたらに数多く見かけるしデザインも見慣れてくると倦きてしまう。 「個性と走り」という意味ではプジョー208の存在感には捨て難い何かがある。 現在の国産車の安全装備の充実度には及びもつかないし燃費も極めて悪いが、こと車を走らせる喜びという一面で梅雨に向けオートバイの「替わりになる」という点でも個人的には有難い存在だ。 ・・・結果、友人への譲渡は現時点ではペンディング「棚上げ」となっている。 しかしながら事態は変化する。 それは日々刻々と激しく動いているのでどうなるか分からない。 結論的には新型のレクサスの購入というのは当分無さそうである。 年齢からしてデカい車、高級な車に威張って乗っている状態には美的なものを何も感じない。 たとえコンパクトカーであってもオシャレでファッションセンスの良い、性能の俊敏な若くて元気な駿馬を小粋に乗りまわす方が今は性に合っている気がするし、センス的にもイケテル感じがする。 何と言っても女性の乗るような軽自動車やコンパクトカーのそれでなく、男らしい「可愛さ」というものもクルマにあるのだとあらためて感得させられた次第である。 それにしてもこんなクルマをよく見つけて来たものだとあらためて実弟のセンスに驚かされる。 こんなチョイスもあったのかと・・・。 同じプジョーの、よりスタイリッシュなRCZには興味があったが「小ぶりなスポーツカー」というものに若干ある抵抗感があった上に、単なるヨーロッパのコンパクトカーというジャンルに入るクルマで、所謂「フレンチノワール」フランスの暗黒街モノ、犯罪映画、刑事映画を気取って薄汚れたジーンズとスニーカーでも穿いて隣の町まで足を延ばしてみたいと思わせてくれるクルマである。 天から降って来たように我が人生に登場した、この新しい愛車もセカンドカーとして、10年来の愛車レクサスの後ろに夜うずくまるように停めてあると夕方のビールを我慢して「ひと走り」したくなってくるし、何よりもそれらのクルマを運転する楽しさを確実に提供してくれるプジョー208は日常生活の快楽抽出装置、男の玩具、遊び道具、プライベートタイムの秘そやかなトモダチとして駐車場の片隅で乗り手を待ってひかえていてくれることが何よりも嬉しい。 多少大袈裟に表現するなら単なる偶然から「美しい新妻を娶らされた若い男」の気分である。 即ち早く仕事を終わらせて家に帰って「乗りたい」・・・チョットお下品な表現であるが・・・我が生活にあらたな彩りを与えてくれるプジョー208の存在はそれほど小さなものではない。 ありがとうございました M田朋玖 |