コラム[ひとくち・ゆうゆう・えっせい]

コラム:ひとくち・ゆうゆう・えっせい

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■ 食事療法2017. 9.23

「生活習慣病」という言葉を提唱された聖路加病院の日野原重明先生が百寿を越えて今年亡くなった。
筆者も医者の端くれであるので、日野原先生のように自分自身も長寿健康を成し遂げて自らの健康法、長寿法を体現したいと考えているが、こればっかりは何が起こるか分からないので自分の寿命については明言を避けておきたい。

ご存知のように昔、成人病と呼ばれていた疾病群を総称して生活習慣病と呼称を変更したワケであるが、この言葉は確かに高血圧症、糖尿病、高脂血症、肥満、脳血管障害(脳出血、脳梗塞、脳血栓)、心疾患障害(狭心症、心筋梗塞)とこれらに連なる多くのポピュラーな疾病群は多くその個人の生活習慣にその原因を認めることができる。
不規則でストレスフルな生活、睡眠不足、運動不足、過食、タバコ、アルコールなどは巷間言われている原因生活習慣であるが、最も重要なものは食生活、食習慣と思える。

驚いたことに多くの医療機関のドクター・ナースを含め、こと医療に関わる人々の食生活の認識度が意外に低いように感じる。

筆者の場合、家族やスタッフ、患者さんをはじめ周囲の人々には口を酸っぱくしてくどくどしく食生活についての指示や助言をしている。
そうして自らの研究の為に何かしら悪性の病気に罹患した人についてはその方の食生活について詳細に聞き取りインタビューをしている。
結果的に多くの悪性疾患の人々の食生活の特徴をあげると、第一に野菜不足、肉類や魚など動物性蛋白質の過剰摂取、甘いものや炭水化物の過剰摂取などが多い。
特に野菜不足は何らかの疾病だけでなく種々の体調不良、精神不安定をきたすようで、これは大昔のNHKの放送番組の中の実験で検証されたように3日程の野菜絶食によってイライラ、不安感が出現し便通異常も起こってくるようであった。

最近の研究では腸内細菌と人間の健康について深い関わりがあるようで、腸内細菌に良い食べ物と言ったらやはり野菜食ということになるのではないだろうか。

人間は歯の形から類推すると肉食より穀物と野菜食、先の尖った犬歯が計4本生えているので、肉や魚などの動物食は人間の歯の総数32本からすると12.5%くらいは食べて良いのであろうか。
食べたほうが良いとも感じられる。
人間の歴史では肉食によって長寿健康を得ているという説があるが俄かには信じ難い。
・・・というのは患者さんへの長年のインタビューでそういう事実を認めたことがないからだ。
逆のケースは山のようにある。
特に、飲酒と肉食の組み合わせは最悪であるようで、若い時から数々のタチの悪い疾病に罹患し、本来健康であるべき人間の肉体と精神を傷めている人の何と多いことか。

近頃の平均的な日本人の食生活の悪さは目を覆うばかりで、ハンバーガーやポテトチップスなどのジャンクフードはモチロンのこと、牛丼屋、うどん屋、カレー屋、コンビニ弁当、弁当屋チェーンのおかずなど殆んど健康的な食品は少ない。
どちらかというと有害と思える食材と食品で造られた類の料理が多くの普通の日本人の口に供せられていると思うと背筋が寒くなる。

またテレビのコマーシャルや町の看板などを見ていると多くの食品メーカー、アルコールメーカーはこぞって不健康な食品を「食べろ、食べろ」と強迫的に何度も夕方とか昼前の空腹時を狙って次から次に放映しているし、赤や黄色の目立つ看板と匂いで人々の油断している脳を攻めて唾液分泌と胃腸の蠕動をドンドン促してくる。
油と塩と砂糖で簡易的においしく装われた料理・食品の数々の誘惑に耐えられる味覚の鋭敏な人は少ない。

そうした有害食品を宣伝する一方で健康食品のコマーシャルをかぶせてくる。
乳製品とか家畜の肉を食べることを「健康長寿」に益するからと推奨する放送もあったりして、人々の健康知識を混乱させる。
「いったい何を食べれば良いの?」と悩んでしまうような健康情報が書籍や雑誌、テレビ、ネットであふれている。
五木寛之のエッセイを読んでいたらそんな情報に悩んでしまうという一節があった。

ちょっと昔になるがキチンと立証された長寿健康上の事実をいくつか述べると、
➀カロリーを30〜40%制限した猿では普通のカロリーの猿より凄く若々しい。
A肉の脂を摂取すると赤血球が塊をつくり(スラッジ化)、毛細血管の血流を悪くする(毛細血管は赤血球より細く、赤血球は折れ曲がりながらその管を通って行き組織を栄養するための酸素を運ぶ)。
組織が酸欠になると壊死とか変性するか癌の発生を起こす可能性がある。
B乳製品はカラダに悪い可能性がある。
牛は成長すると草を食べてその大きな肉体を健康に維持する。
牛乳を飲ませると病気になる。
そもそも牛乳など飲まない。
それを人間が食さなければならない理由はない。
C日光を浴びすぎると肌が老化する(光線老化)。
D気分が落ち込む(うつ病、うつ状態など)と免疫力が低下し悪性腫瘍が発生しやすくなる(精神神経免疫学)。
E不眠は脳卒中、心臓病、うつ病、癌などの発生頻度を高める。
F人間は野菜を食べないと心身の調子を元気に保つことができない。
犬や猫、トラやライオンのように体内で野菜に替わる物質栄養を造ることができない。

まとめて記すると人間の食べる物は割と限定されていて、その人間が居住する周囲20km以内で取れる食材を季節に応じて食べるのが良く(長寿地域の研究)、田舎に住む日本人の場合、やはり米と野菜、小魚(12%以内)、豆腐、納豆、果物、味噌汁などを腹8分目で食べているのが安全なようである。

ついでに健康十訓なるものがあって以下である。
1.少肉多菜
2.少塩多酢
3.少糖多果
4.少食多噛
5.少衣多浴
6.少車多走
7.少憂多眠
8.少憤多笑
9.少言多行
10.少欲多施
読んで字の如く結構含蓄のある言葉である。上記の健康知識と殆どよく合致する内容ではないか。

追記
筆者の2歳下の後輩(昭和30年生まれ)の例を挙げよう。
同じく糖尿病を患っているのであるが、一人は大阪に長らく在住し食事指導は一切受けずにいたら、どんどん病状は悪化しインシュリン注射、腎不全、透析治療にいたっている。ウナギと寿司が大好物だそうだ。さもありなん・・・である。

一方東京在住だった後輩は、5年前にうつ病で帰郷し、併発していた糖尿病(インシュリン注射状態)を改善すべく、入院、食事指導を施用したところ、瞬く間に、数値が正常化し、薬(糖尿病)も現在服用していない。まさに彼の場合、結果的に「うつ病が肉体の健康を守った」良い例である・・・(おっと、これはハッキリ言って自慢話である。恐縮)
勿論見た目も後者の後輩の若々しさは、言うまでもない。少なくとも10歳以上は若く見える。ちなみに正しい糖尿病予防食は健康長寿食である。

追記2
食事療法、薬物治療、インシュリン治療、透析とステップアップ(?)する糖尿病治療。個人の健康の立場からは、食事療法にとどめられるのが最も好もしい。けれども現在の医療制度では、利益優先の立場であると、後半に行くほど利益が上がる仕組みになっている。結構由々しき問題であるのに、多くの医療関係者、政策立案者たちはこのことに、どこか無頓着に見える。
食事療法という最も安価でシンプルな治療手段で個人の健康を回復させ医療費用を削減させたのであるから、本当はもっと報われてもいいはずなのだが、現行の医療制度では残念ながらそうはなっていない。


ありがとうございました
M田朋玖



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