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■ MR不要論 | 2019.12.30 |
MRはミスターではない。 昔のプロパー。 実際は製薬メーカーの営業マン(レディー)。 Medical Representativeの略らしい。 医療情報を医者に伝えるという役目となっているが、実のところ薬のセールス。 開業医にとってはとても有難い存在だ。 大昔から。 MRには会わないと決めているドクターもいるらしいがこれはモッタイナイ。 「文字にできない」「人に言えない」情報をいっぱい持っておられるので結構貴重な人々だ。 巷には「MR不要論」とかがあるらしい。 そのビジネス感性で大丈夫なんだろうか。 マンツーマン、対面でしか得られない大切な情報もある筈なのである。 お薬の情報をネットや本や雑誌や講演会などだけで「得る」というのは考えているよりかなり骨が折れるし身につかない。 患者さんを診察しないで検査データと紹介状(診療情報提供書)だけで診断と治療をする、ようなもの・・・に似ている。 内科系医者とか精神科医とかは基本的にお薬のチカラを借りて治療するワケで、この薬の情報については所謂「薬情」(薬剤情報)や医学書などでは心もとない・・・というか効能や副症状についてその軽重や出現が微妙に判然としない。 また講演会などに出かけなくても素朴で率直な質問はできにくいし、そういう時間もない。 そうなるとMRさんの情報に頼るワケで、これは物凄く助かる。 たいてい2時間の講演会でも結論としてはメモにすると殆んど「1行」だ。 これをMRの方からそれこそ1行で聞けるというのは時間とお金の節約になってとても嬉しい。 特に本来は難しいとされる「漢方」の処方や「精神疾患」の投薬のサジ加減など処方例集などが基本的に存在していないので(今日の治療指針というのがあるがこれとて教科書というワケではない。あくまで参考書のレベル)実臨床の現場ではよく効く新薬とかの情報があると期待と「ときめき」を持ってその情報を欲するワケである。先述したように或る程度宣伝してもらったり営業してもらったりするのは実に有難いことなのである。 「こんな新商品がありますよ」てなことをテレビやラジオで流す訳でも無いので益々もって必要な人々だ。 仕事上の付き合いというと自分の施設のスタッフ全員となるが医者同士の集い、〇〇会とか医師会、同窓会などは実のところそれほど楽しくない一方で取引業者の最先端で働いているMRの方の数人には勝手に強い親近感を抱いている。 薬剤は情報だけでなく「雑談」でも始まるものなら営業マン(MR)としては「してやったり」との感覚だろうと想像するが、それほどその親密性に価値を置かないMRの方もおられるかも知れない。 30年くらい以前、MRの方ではないが県内では大手の某問屋さんの営業マンと親しくなって当科の慰安旅行やトライアスロン大会出場とその準備の練習、夜の店など、プライベートの殆んど、心理学セミナー参加なども家族ぐるみで過ごした。 ついでにその彼の結婚式でスピーチまでさせてもらった。 その当時の彼は殆んど何の営業活動もしていないのに当院の売り上げが2倍、3倍となってしまってドクターとの「付き合い」が即営業成績に直結するという「法則」が計らずも確認されてしまった。 そのごその彼は順調に出世しておられるそうだ。 行政や監督官庁のお役人はそういうことを嫌がっているのだ。多分。 何しろ医療費における薬剤費の割合は50%以上と聞く。 受診抑制、処方抑制の視点からメーカー及び卸屋の営業活動に強い制限をかけることになったのであろう。そうならば、いつもながら大変短絡的であられる。 またこれらの「営業活動」を軽視した結果、自社の製品の商品力、即ちよく効くお薬についてはその効能の如何に関わらず「売れない」という事態も招来してしまっているようだ。 同じ効能で同種の薬品の場合、営業力の強弱にかかっているのに「MR不要論」などをもしかして経費削減と称してメーカーさんが主導しているのか。そうであれば自分の首を自分で絞めている態度。少なくとも結果的にそうなるのではないか。 結構「良い薬」なのに「売れていない」などということが時々見られる。即ち業績不振という結果。 薬剤についてこれが結構あるのでMRの減数とか販促活動の「自粛」というのは手を縛られたボクサーの態で、まさに「戦えない」状態なのではないかと余計な心配をしている。 同時に医者の側としても「薬剤の情報」について不知になって、結果的に新しい治療法の獲得や進取の気風を削がれてしまって医療界全体にとってよろしくないのではないかと考えている。 また雇用確保や促進。はたまた営業活動に伴う種々の周辺業界の衰退などろくなことがない。 というのが筆者の偽らざる感想である。昨今の製薬業界、医療業界を取り巻く環境の。 いったいお役人は何をどう考えておられるのだろう。イタチゴッコが続いているようだ。 「自粛」「規制」「合理化」これらの言葉から導き出される状態は「衰退」「本末転倒」に違いない。「経済」を最優先すると逆に「経済衰退」となるようだ。人間とは権限を与えて放っておくとどんどんお馬鹿になるものらしい。 自戒を込めて。やれやれ。 会社は「商品開発」と同時に「営業」即ち「販売」も大切だ。その営業の最先端で活動している人々を不要とは何たることだ。医者もいくら腕が良くても患者さんを沢山診てなんぼ。「売れて」なんほなのである。 ワケワカラン。 ありがとうございました M田朋玖 |