コラム[ひとくち・ゆうゆう・えっせい]

コラム:ひとくち・ゆうゆう・えっせい

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■ 「サピエンス全史」2019. 2. 4

それを知ったことで人類が幸福になったとでも思えない書物が全世界で1000万部(それでも地球人類70億人中の1000万だから数字的には知れたものだ。毛沢東の「語録」や聖書にくらべたら微々たるものだ)も売れたとされる衝撃の書「サピエンス全史」「ホモデウス」だ。
42歳の若き歴史学者、イスラエル人のユヴァル・ノア・ハラリというスキンヘッドのお兄さんの筆による作品だ。

人類誕生とされる250万年の歴史の中で7万年前の「認識革命」、2万年前の「農業革命」。ここに重大なポイントがあるとのことだ。
人類がフィクション、即ち物語を作り上げること(認識革命)で「集団行動」を可能にし、さらにその英知によって発明された農業は集団行動と共に人類を「富の蓄積」と貧富の格差を生み出し、ついでにそれをめぐって争いまでするようになった。
とても分かりやすい理論で少し知的な人なら誰でも洞察できる内容だ。
多くの人々はそのことにうすうす気づいていてもオソロシクテ無視して来たという背景があるかも知れない。

これらの経緯を経て国家、帝国が生じ多くの人々は一部の支配者によって搾取され長時間労働を強いられてきたという論である。
まったくそのとおりで今でも文明のその構図・構造は変わっていない。

人類が壮大なスケールの「詐欺」に遭ったような気分になる本である。
この書物は或る意味禁断の書とも言えるもので現在の社会構造、文明を全否定しているとも言えるかも知れない。

我々人類が米や小麦を栽培し育てているのではなく米や小麦から見れば長時間労働と飢餓や争いを人間に生じさせていると見ることができるようだ。
ハラリ氏の優れたところは「視点の移動」で、人間中心から植物や動物や貧しく虐げられた人々の視点から「歴史」を見なおしていることが売れた要因と思える。

考えてみれば人類の歴史物語の多くは支配者層を中心に描かれていて、戦いの歴史や領土の争奪の歴史など殆んど全て「歴史を動かして来た人物」を中心に表記されていることにあらためて気づかされる。

また人類の幸福という視点から眺望するとフィクション(物語、作り話、宗教、道徳、倫理、貨幣、国家、社会)によって上手に支配者層に操られ、富の収奪と蓄積を容易にさせた・・・即ち人類は全体からみると少しも幸福になっていないという厳然たる事実を読者に突き付けてくる。
人類がまた農耕以前の狩猟生活の方がこと人類の幸福については現代より幸福であったことがうかがえるし、健康の観点からも農業の産物である小麦や米など糖質過剰摂取によりはるかに不健康な生活を強いられていると見ることもできる。
これは最近の栄養学の研究で明らかになっている。
人類は多くが糖質中毒に陥っていて米やパン、甘い物、果物など炭水化物の摂取で生活習慣病の多く、糖尿病・高血圧・癌・心臓病・脳卒中などの禍々しい疾病にさせられていて、それらから利益を得ている産業者(農業者)、食品会社の多く、製薬会社、製薬メーカー、医療機関などみんなグルになって殆んど人は何の自覚もなく、それか当たり前のこと、良きことと信じて邁進しているといった状況にあることを気づかせてくれる。

ハラリ氏はさらにその著「ホモデウス」によって人間は将来、未来に神の力を得ることができると言い切っておられる。
人間が遺伝子操作、ゲノム操作によって「生命」を創造できる、即ち神と同様のチカラを持つ・・・と。

また人工知能(AI)を進化させ人間の知能を越える(今でも越えている)類を創造するので人間の多くはその技能によって峻別され多くの無用者人間と一部の有用者人間に分けられ、さらに貧富の格差がさらに拡大すると・・・述べておられる。
いくら知能が発達して「生命」を創造することができたとしても神にはなれない。
神は生命そのものだけでなくその材料となる多くの物質、空間や時間、宇宙を創造している・・・ということになっている。
これが同氏の言うように人間の作った「フィクション」であったとしても神とか霊とかが単なる作り話だったとしてもそれなら誰がこの世界を・・・微量の物質から広大無辺の大宇宙までを創造したというのだ。
またそれらに思いをよせた人間の感情、たとえば敬虔な気持ち、厳かな気分、それらのいくらか高尚な心をAIに持てるのだろうか。
またそれらを持てたとしてもそれで人間になったと言えるであろうか。
答えは否である。
・・・というワケでこの書物の言っていることは「歴史」の捉え方、未来予測としては素晴らしい洞察に満ち、思考の方法の材料としては興味深いが哲学的・・・それは宗教も含むが・・・には浅薄な論に見え、多くの哲学書、宗教書の理や論には及ばない。

この書もまたフィクションと言えるし、この書物を推奨しているビル・ゲイツ(マイクロソフトのボス・大富豪)、マーク・ザッカーバーグ(Facebookの創業者・大富豪)、カズオ・イシグロ(ノーベル文学賞受賞者)など人類を上手に篭絡して大儲けしたり大変な名誉を得たりしている人々、決して人類に誇れるような高尚な人達ではない。
そもそも金持ちであるとか著名であるからと言ってその言葉に重きを置くのはオカシイ。
真の賢人というのはそのような身分にはならないし達人、悟道の人、聖人などは何も持たず清貧のままであることが多い。
人類の来し方、行く末を静かに観察し見守る傍観者の態度を貫いていることが多いようだ。

この書物は現代の富裕層たちをさらに精神的に満足させ、そうでない人々を精神的にドン族に突き落とす「パンドラの箱」のように思えて仕方がない。
何故なら同書は現在の世界、社会、歴史、人類を全否定しているように思えるからだ。
人類を少しも幸福にしない「書」である。

ありがとうございました
M田朋玖



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