コラム[ひとくち・ゆうゆう・えっせい]

コラム:ひとくち・ゆうゆう・えっせい

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■ 「駅ピアノ」2018.11. 6

NHK-BSのドキュメンタリー番組。
タイトルも中身も素晴らしいので録画して何回も鑑賞している。
「一挙放送」というのを観ているが、やはりというかVol.3まで製作されたのをまとめた「プラハ特別版」は人気だったらしく何回も再放送された。
それで敢えてソレ(プラハ特別版)を観ていたら確かにしみじみとした静かな感動を憶える。

特にラストの奏者。
夏の夕。薄闇に包まれたチェコの首都プラハの駅のホームに無造作に置かれた古ぼけた黒色のアップライトピアノ・・・それには落書きのような文字が書かれている・・・に向かって無骨な顔とゴリラのような肉体を持ったマッチョ系の男が赤いTシャツにジーンズ姿で自身のオリジナルの歌を見事に弾き語って聴かせている。

♪心をおだやかにして 正しい事だけを考えよう♪
♪悪の誘惑に打ち勝つんだ そうすれば新しい人生を始められる♪

若いころに傷害事件を起こし服役した男が「駅ピアノ」で女性に出会い一緒に暮らしているとのこと。
「ここでピアノを弾いていたら突然彼女が話しかけてきた」
「それでお互いに気に入って一緒になったんだ。ピアノのおかげだ」
「今までいいことなんてほとんどなかった。でもこの愛を見つけたのは最高の幸せさ」
男の言葉。
そこに可愛らしい彼女がおでこにキスをするシーン。

これには泣かせられる。
これから夜勤に向かうらしい荒くれ男。
恐らく肉体労働者だ。
そのいくらか波乱にとんだ人生の物語がほんの数分間の音楽と映像に込められ素晴らしい一幕となっている。
それぞれの人生を切り取って凝縮して見せてくれる駅ピアノの人気も充分にうなずけさせてくれるラストピリオドだ。
下手な映画のワンカットよりも美しい映像と音に仕上がっている。短いコメントがどれも印象的だ。人生のささやかな日常を愛おしいと感じさせてくれる。

人生と音楽はとてもマッチングが良いようだ。
友人の中にはプロではないが音楽で「生きて来れた」という男もいる。
筆者は音楽に深く傾倒したことはない。
毎日それに接するワケでもない。
けれども仕事中のBGMは欲しいし、夜の店に行けば歌いたくなる。
クルマに乗れば大概は音楽無しだが気分次第で聴くこともある。
個人的にはどちらかというと人生の陰の方に寄り添うように在るのが音楽のような気がする。
人の孤独や苦悩を瞬間的に癒やし慰め、傷めた心を治める。
興奮を煽り、時に鎮めるじつにありがたい芸術が音楽である。

「駅ピアノ」のシリーズは件のプラハ以外にロサンゼルスの駅、シチリア島(イタリア)の空港、アムステルダムの駅(オランダ)となかなかロマンチックな選択となっている。
それぞれに人種も民族もちがうのに本当に人間という存在は世界中同じだ。
そのことにあらためて気づかされる。
特に音楽に親しむ人々には或る種の情感の豊さを感じる。
もともと人間の情感は愛から生まれる。
愛が霊的な調和と共に心にある時、心は完全に平和であるらしい。

神の恩寵とも呼ぶべき音楽という人間の聴覚への贈り物はアルコールとも相性が良い。
「酒と音楽とダンス」は、特にラテン系の民族にとっては人生の必須と考えている人が多いと聞く。
ドイツ人はビールを飲むと歌う。
音楽の都はオーストリアのウイーンであるがプラハもそうらしい。

「駅ピアノ」はオリジナルな歌、名の知れた楽曲を或る人々は巧みに、或る人はいくらかたどたどしく、それらが全て紛れもない音楽だ。
それも生々しい生きた音楽であることに感動を憶える。
それらが世界共通の言語であればもしかして言葉は違っても共通の音楽で語り合うことが出来れば今よりも世界は少しは平和であるかも知れない。

音楽で世界平和を築こうとするアイデアがあり有名なミュージシャン達が集まって何回も実行されたが、今のところその実りを確実には得られていないようだ。

たそがれゆく夏の日の夕暮れ。
青々と染まりゆく駅舎の電灯が幾分か哀調を帯びて連なって灯っている。そのコンクリート造りホームを、肩を寄せ合って去って行く大男と小柄な女性。
まるでホンモノの映画のラストシーンだ。
プラハに行ってみたくなる。
この「駅ピアノ」だけでも一見の価値ありだ。
ひょっとしたらこの番組の影響でチェコのプラハ駅にはハワイのホノルル空港のように日本人がウジャウジャ居たりして・・・。
それだと情趣がなくて嫌だネ。

ありがとうございました
M田朋玖



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