コラム[ひとくち・ゆうゆう・えっせい]

コラム:ひとくち・ゆうゆう・えっせい

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■ 女神の見えざる手2018. 7.12

久々のオモシロ映画。
7月8日、日曜日。
激しい降雨の為に高速道路が止まり予定されていたバスケの試合が延期になった。
高速の入り口に建つレンタルビデオショップに立ち寄り、気紛れに借りたDVDのタイトルが表題である。

「ゼロ・ダーク・サーティ」という映画で好演を見せたジェシカ・チャスティンという女優さんが凄腕の女ロビイストを演じている。
白い肌に明るく柔い髪、凸凹の激しいゴツゴツとした骨相の女優で、唇が厚く有名ロックバンド、ローリングストーンズのミック・ジャガーを思わせる日本人からするととても個性的な容貌だ。
痩せこけた頬と老婆のように落ち窪んだ双眸と武骨な鼻が少し不気味。
白人の女性らしく一見は痩せてホッソリとして見えるが、その肉体はいかにも女らしい曲線美をそなえたなまめかしく魅力的なモノである。
今時は男性にも女性にも好まれる体型ではないかと思える。

鋭い頭脳と弁舌能力を持ったヤリ手の主人公の映画は、それが老若男女を問わず好みである。
件の映画も最後のドンデン返しは痛快であり、いくらか感動的ですらある。
そのダーティーな仕事ぶりからすると結末はとても倫理的で正義感あふれる展開。個人的には好感の持てる内容であった。

ラストの逆転劇がスティーブン・ソダーバーグの作品でアカデミー賞を取った「トラフィック」とか、同じ製作総指揮者として腕をふるった「フィクサー」という映画とソックリなのでてっきりソダーバーグさんの作品と思っていたら英国人監督のジョン・マッデンのそれであった。

複雑なプロットを用意してあり、多分に清明な意識と頭脳で鑑賞しないと物語が見えてこない。
米国における「銃規制法案」を「通す」側に敢えて「無償」で取り組み、結果的に自分を犠牲にしてまでも勝利を勝ち取り、さらに仲間を守ったという点でも鑑賞後に一種のさわやかな感動を持たされる。
その「仕事ぶり」・・・手段を選ばず「勝つ」ことに執念を燃やす姿に世間や社会から「寄生虫」とまで呼ばしめるほど白眼視され、仲間からも忌み嫌われるような態度、行動、ふるまい、言動も結末における日本の時代劇的勧善懲悪ぶりを見せられるとやっぱり安心する。
人間の本質は善なのかと・・・。

「銃規制」についてはかねてより米国内の重要な長年の課題になっており、オバマ政権の時にも現トランプ政権でも学校や劇場、飲食店など人の集まる場所での乱射事件が後を絶たないことは世界中でも周知のことである。

「銃を規制する」なんて国際的には常識的な法律と思えるのにカウボーイの国、移民の国にとっては銃器の購入がかなり簡単であることをあらためて思い知らされる映画ではあった。
それに反対する勢力、即ち銃器のメーカー、それは巨額の富を持つ側(ネズミ)に敵対してその法律を通過させる「腕」それも極めて巧妙に二段三段構えの罠を仕掛け、敵を陥れて行く姿が痛快でない筈がない。

「悪を倒すには悪しかない」のかも知れない・・・と個人的な経験でも得心させてくれる作品であった。
「毒を持って毒を制す」

人間の存在も善良さと悪を兼ね備えているくらいでないと「役に立たない」ことが多い。
所謂「悪女」がいかに魅力的であるかと同様に・・・。
カタチとして典型的な「悪女」豪腕ロビイスト、エリザベス・スローンを演じるジェシカ・チャスティンも幾分それらしい雰囲気をたたえている女優さんだ。
一見して善良そうな女性とは思えない。

脇役が殆んどカスんでしまうくらい存在感のある名演技で観衆を魅了しているが、ドラマの後半部分で垣間見せる男女の脇役たちの仁義にかなった行動にも感動させられる。

こういう出来の作品を観せられると本屋のレンタルビオコーナーへも時々は立ち寄らねばなるまいと思える。
考えてみれば有難いことである。
「ツタヤ」の創業社長である増田宗昭氏が講演で述べているように「人間に人生を教えるのは本と映画しかない」のかも知れない・・・と考える。

筆者の娯楽も上記2つの類を中心に展開されており、ファッションやライフスタイルも多くそれらから得た情報や知識に基づいている。

最初に登場するクルマが黒のレクサスLSだったというのも好もしいが、ヒロインの日常の足が運転手つきの大型の米国車で、この車は夜のテールランプでしか登場しないのも何となく奥ゆかしい。
マッデン監督のこだわりをそういう小さな画面の工夫に感じさせる。
物語終盤の長いスピーチも感動的だが、エピローグの決めゼリフがとにかくカッコいい。

女神=女性の票なのかヒロイン、エリザベス・スローンなのか。
見えざる手=神の意志なのか、ヒロインの巧妙な罠なのか。
ショルダーバッグを肩に刑務所から出てくるヒロインのラストシーンのストップモーションが素晴らしい。孤独と虚無との入り雑じったこの女主人公のやるせない表情がタマラナイ。元薬物依存でワーカホリックのキャリアウーマンが捨て猫のように可哀想で発情しそうであつた。非情で冷徹で男のような一見は悪女も可憐な「オンナ」を垣間見せてくれる。
いずれにしても久々に楽しめた映画であった。

ありがとうございました
M田朋玖



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