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■ 風と共に去りぬ | 2018. 6.28 |
超有名なアメリカ映画である。 ヴィヴィアン・リー、クラーク・ゲーブルがそれぞれヒロイン、ヒーロー。 若い頃に原作も読んで映画も観たが少しも面白いとは思えなかった。 今でも同様である。 我らが塩野七生先生に言わせるとクラーク演じるレット・バトラーより優男のアシュレイ・ウィルクス役のレスリー・ハワードの方がお好みであるらしい。 筆者の好みでもシャム猫を思わせる気性の激しそうなスカーレット・オハラ役のヴィヴィアン・リーよりもメラニー役のオリビア・デ・ハヴィランドの方がはるかに好みであるから反論はできない。 いずれにしても個人的にはどうでも良い映画だ。 ただ当時のカッコイイ男の象徴としていかにもマッチョ系の男くさい端正な顔のクラーク・ゲーブルの存在感は凄い。 この作品で絶大な人気を博し、以後は大スターの名をほしいままにした。 言わば出世作と呼んでも良い作品である。 実際にはまだ40代で総入れ歯だったらしく、口臭があって相手役の女優さんがキスシーンを嫌がったなどというエピソードもあったようだ。 若い時のクラークさんの写真を見ると、出っ歯で空きっ歯で少しもイケメンに見えない。 入れ歯にしてイケメンになったり顔相が良くなったりする人がおられるようで、時々筆者にもご親切に入れ歯とかインプラントかを勧めてくれる人がある。 「放っといてくれ」 5回も離婚したクラーク・ゲーブルもその妻キャロル・ロンバードとの婚姻中は大変な愛妻家として知られ、飛行機事故で彼女を失ってからは演技も活躍もパッとせず、傷心の為か59歳で入没している。 勿論、再婚はしたらしいが・・・。 相性の良いベストパートナーとなるとその出逢いの確率は少なくともクラークさんにおいては5分の1ということらしい。 世間一般でもその程度の確率ではないかと考えている。 お相手が多いと迷いも増えて或る意味気の毒にも見える。 上記は前置きである。 「風と共に去りぬ」という来生たかおの曲があって、約1年間の休養期間を終えてコンサート活動を再開したばかりの今年、平成30年5月20日に会場でアンコール曲として歌った。 ピアノ弾き語りの「風と・・・」にはいたく感動した。 思わず知らず落涙してハンカチを手にする人を何人も見かけたので暗いコンサート会場も小さなすすり泣きと静かな感動の空気で包まれた。 温かい愛に満ちた、それでいてさり気ない素晴らしいエンディングであった。 曲名のとおり来生さんも静かに感謝の言葉を短く述べて「風と共に」舞台から姿を消した・・・。 ナカナカ巧い演出である。 「休養」の為か声もかなり出ておられ、充分に「聴かせて」くれたのは嬉しい。 本当に行って良かったと思わせる素晴らしいコンサートで、入場料の6000円も安いと感じた思い出に残るひとときであった。 大したものである。 以前から述べているように筆者の音楽人生は20代後半に始まっており、その始まりに来生たかおに出逢い、以来36年間聴きつづけ、歌い続けているので骨の髄まで全身性の「フアン」である・・・最近まであまり自覚はしていなかったけれど・・・。 人生は風のように過ぎて行く。 来生氏も星まわり的にはいくらか「風の人」であられるので、そんな軽く、重苦しくなく、聴き苦しくもない、癖の無い、囁くような歌い方をなさるので長く聴ける歌手のひとりと思える。 その上どうも声が個人的に耳障りが良いようで「とても良い声」とは思っていないが聴いているととにかく心地良い。 高く澄んだ伸びやかな「小田和正」でもなく、全盛期の松山千春でもなく、勿論あまたの演歌歌手、まるで般若心経かとしか聴こえない若い人達の楽曲でもない全くない、一種独特の音楽世界を展開しておられるように思える。 ギルバート・オサリバンというイギリスのシンガーソングライターの影響を受けたそうである。 テーマはノスタルジーだそうで、コンサート会場のBGMは映画の小津安二郎監督のテーマ音楽が使われている。 だいたい地味なスーツかジャケットにネクタイというイデタチ、長い白髪で最近は老眼鏡をかけて歌詞の書いてあると思しき紙を見ながら歌っておられるようだ。 彼の人の曲調は初夏と秋と夏と冬と季節ごとにあっても初夏物が作品として良いと感じる。 中森明菜で大ヒットした「スローモーション」以下、数々の楽曲があるが個人的に好きな曲に「気配」というのがある。 ♪朝もやの部屋 重ねた腕 夏が近づく 濃密な気配♪ ♪6月の朝 光と影夢はつれづれ 想い出レリーフ 振子時計に時はあそんで 君の寝息のリズム 数えている♪ あの名曲good−bye−dayもそうであるが、来生さんの歌は女性が眠っているのを静かに眺めている・・・というシチュエーションが結構多い。 特に静かな曲では ♪少しだけ疲れた顔で 君は静かに眠っている〜♪てか。 筆者も女性は朝も夜も寝てくれている、眠ってくれているのが好きだ。 甘えられるのも好き。 ・・・そして静かに「風と共に去りぬ」 それは優しさと思いやりの表現でもある。 もっとゆっくり眠っていて良いよ・・・みたいな。 朝早く起きて仕事や子育てに頑張っている女性も勿論好きであるが、実のところ本心は朝も夜も寝てくれているのが好きなのだ。 遅起き早寝のゴロゴロとして睡眠時間の長い猫系の女性が好みのようである。 何故なら自分が静かに物も言わず勝手に「風と共に去れる」からだ・・・と思う。 自分のワガママ勝手、自由の為のパートナーのありようで、これは実は寝たふりでも構わない。 離れる時にはとにかく仰々しくしないほうが良い。 逃げるようにコッソリ、スーッと立ち去るのが自分のスタイル。 映画「風と共に去りぬ」でも我らがレット・バトラー様もあっさりと風と共に去ってしまったではないか。 ひとつの男の美学ではあるんだなあ「風と・・・」とは。 ありがとうございました M田朋玖 |