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■ 1万時間 | 2017.12.25 |
筆者のコラムも1040本を数えている。 少しずつ書き溜めていつの間にか達成した数字だ。 一本のコラムにかける時間は30分を目標にしているが意外にトータルすると1時間くらいかな・・・と勝手に計算しても約1千時間しかならない。 平成18年から書き始めているので約11年間かけた実績(?)だ。 このペースで書き続けてもあと90年ぐらいかけないと1万時間には到達しないことになる。 何しろ毎日書いているワケではないし、1時間以上かけていることも無いのでそれぐらいの計算になる。 「1万時間の法則」というのがあって、どんなことでもプロ並みにそのことについて堪能になるには1万時間必要であるとのことだ。 ひとつの比較的達成しやすい数字があって、1日9時間かけて3年というものである。 プライベートの時間の殆んど全てをかけて或るひとつの技能の学習に打ち込むということをするとプロ並みの能力、技能を身につけることができるらしい。 これは多くの普通の凡人にとって或る意味素晴らしい僥倖で、とにかく「石の上に3年」で頑張ればなんとかモノになる理論であるなら努力を惜しまず勉強すれば相当な成果をその人生において得られるということを示している。 筆者の場合、中学から高校2年生まで5年間寮生活で学校の勉強・・・それは約9時間授業と同時に寮で5時間の計14時間あまりを費やして勉強にいそしんだワケで、今考えてみると凄く有難い環境であった。 どんなに馬鹿で阿呆でも少しは利口になるはずである。 当時はテレビもゲームもラジオすらなく或る意味社会から隔絶された刑務所の囚人のような境遇であったけれども、どちらかというと世事に疎いとても幼稚で無知な少年であったからそれらの自分の運命を従容と受け入れている風があって、とりたてて何の不平も不満もなく、今思えばひどく規則正しく地味で殆ど彩りというもののない日常に埋没していたようである。 少年や少女が大人の世界から遠ざかっている隔絶されている状況というのは教育的に好もしいらしく、R12とかR18とか18禁とかを成年向けとかいう言葉で大人のどちらかというと有害な習慣、趣味、思考、たとえば飲酒、喫煙、ギャンブル、性行動等については勿論のこと、その他現在テレビやネットなど誰でも接することのできる知識情報というものは子供たちにとって極めて有害であるらしい。 子供の成長はゆっくりと慎重に図られるべきで速成というのはよくないらしい。 年齢に応じ段階的に進められるべきものであるようだ。 そもそも或る業に秀でて社会に出て立派な人間として活躍するのにこの1万時間の法則にのっとって勉強や練習するのに余計な知識や情報は興味関心の散漫さを惹起すると同時に時間そのものを取ってしまうので、まずもってあらゆる有害無益な事柄、情報から隔絶するべきで、しかるのちに1万時間をかけると決意して毎日コツコツと努力を重ねていくという覚悟と忍耐力を要する行動を継続して実践することである。 28才で100億企業の社長であった頃の孫正義氏の講演CDを聴いたことがある。 その年齢にしてもいくらか老獪な雰囲気をたたえた容姿(写真で見た)、堂々と明快で断固とした語り口から漏れ出た情報の中にアメリカの大学(UCバークレー校)の在学中に自分は「二宮尊徳よりも勉強するんだ」と決意して寝る時と食事する時以外はそれにいそしんだそうである。 そうしてその時の公言どおりめでたく日本一の実業家になられたワケであるから誠に大アッパレである。 時間をかけて勉強することの大切さ、重要さとその効果、結実を見せられ圧倒される講演CDであるので多くの子供たちに聴かせてあげたいと心から思う。 少なくとも自分の息子・・・現在医学部の4年生にはこれを聴かせた。 彼の人(孫正義氏)には1万時間もへったくれもないと思えるが、天才と思える人ですらこのような努力をなさっていてその実りを獲得されている現実を見せられると我々平々凡々人でもそれなりに一業を成して社会で名を成したいと思わなくても何かしらの技能を持ってとりあえず最低限生きていく術を獲得するのに時間をかけるという技術もとても有益なのではないかと思える。 「1万時間の法則」なるものが正しいかどうかはこの際問題ではない。 その考え方が先述した孫正義氏や野球のイチロー、長嶋茂雄氏などと同じように多くの成功者と言われる人々に共通する最大の特長であり、普通に実践実行されている常識的で一般化したものなのである。 筆者のエセ物書きのレベルもひとつのコラムで1時間かけたと多目に見積もっても僅かに1千時間であるので、実のところまだまだなのである。 それにしても医者の仕事もこんなに時間をかけているのに、とっくに1万時間を超えている筈なのに少しも上手にならない感じがする。 それなりに上達している能力もあるが、こと精神疾患についてのいくつかは今でも相当悩ましい。 効果がないか、あっても僅かである人が10%くらいはおられる。 そして常に悩む。 勿論劇的に治った人も数多くおられるので心は救われるが痛い思いをしたケースが時々心を「大なた」でえぐるように激しく我が胸を突きさす。 内科疾患、特に糖尿病などで悩むことはない。 それは数学的に食事の内容と量と回数に準拠する。 内科や外科の疾患でも難病や悪性疾患を除いて我々市井の臨床医(町医者)にとって普通に診る疾病の多くは凄く単純な例が多い。 心の病、精神疾患については年齢、性別、家庭環境、職場環境、食生活、人間関係、遺伝など考慮すべき項目内容が多すぎてアタマがパンクしそうになるほど考える。 それを考えないととても優秀なドクターもおられて、それは脳の科学的メカニズム、化学反応について堪能であられる。 薬理学をそれこそ1万時間以上学習された結果であられると考えられるが、その先生ですら神のように万能ではないようだ。 ただ、こと「化学」「薬学」については弟子入りしたいと思うほどよくそれらに知悉しておられる。 ありがとうございました M田朋玖 |