コラム[ひとくち・ゆうゆう・えっせい]

コラム:ひとくち・ゆうゆう・えっせい

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■ 冬バイク2017.12.23

12月に入ってひどく寒い日がつづいている。
朝は氷点下だ。
12月3日に納車されたヤマハFJR1300は中旬の今日(12月14日)まで計4回ほど乗った。
一番の印象は「寒くない」というものだ。
標準装備のグリップヒーターと広々としたウインドスクリーン(防風カバー)が絶大な力を発揮してくれているようで防寒性についてはほぼ完璧と言えるオートバイだ。

バスケットの練習再開と年の瀬の多忙のためにナカナカゆっくり乗れないが、片道50kmほどのライダーズカフェと本屋を目的地に夜に時々この新しい愛車にまたがる。
冬は多少寒くても真夏より快適だ。
防寒装備と防寒ウエアでしっかりと暖を確保していると何のことはない。

冬の夜のソロツーリングも結構ロマンチックだ。
キンキンに冷えて透明度を高めた空気がそうさせるのか、冴え冴えとした月。
鋭く空を切り取る青々とした山の稜線。
星々までもがそのきらめきを増しているようだ。
それらの背景に囲まれた田舎の山中道を冷たく澄んだ月光や星の光を浴びながら重い1300ccのオートバイを静かに走らせていると路面を擦るタイヤの生み出す摩擦音やエンジンの唸り声や風切り音が一瞬消えてしまい、宙を浮いて飛んでいるような錯覚を憶えるが、これは恐らく全き幻想で脳の中のただのイメージに過ぎない。

冬に乗るバイクがちっとも寒くないというのは驚きであるが、元々「バイクは冬」という思い込みがあったので筆者にとってはとても好都合だ。
毎日夕方になると乗りたくてウズウズするが如何せんさまざまな用事の為にソレがあまり出来ないでいる。

山谷を切り抜け街の灯りが見える頃には冷気も少し緩み、月光もその明度を下げて輪部をボヤけさせる。
高速から国道に下りると寒さもさらにやわらぐ。
クルマやトラックの車列をかわしながら少し心あせりつつ目的地へと急ぐ。

行きつけのカフェに立ち寄り、熱いドリップコーヒーで一息つくと店内の暖気のせいか顔が火照ってくる。
心地良いカフェインの覚醒感覚、疲労回復感が全身に染みわたる。
そしていくらか冗舌になる自分をおかしく感じながら早々に店を出て本屋へ向かう。

クルマの移動よりオートバイの移動の方が心楽しく愉快であるのは何故なんだろうと考えてみる。
こんなに寒い夜に危険を冒してまでそれに乗る価値があるのか?と。
それはまさしく過程であるからに違いない。
「人生は旅」のようなものだ。
そして普通目標とか目的地にばかり気を取られ、それ(人生)はただの過程であったことに終わりに近づいた頃、或いは終わるまで忘れてしまう・・・気づかないで過ごすのである。

そういう意味で「今ここ」に集中して生きていると過程であることすら否定的な感覚を得て人生が目的地でもなく過程ですらなく、それはただ「瞬間の集合体、即ち無であること」に気づくのでるが、普通の意識であるとそれは得られないので、オートバイとかに乗って少しばかり危険を意識し「過程」に集中している時に思考は鋭敏になり五感は少しだけ研ぎ澄まされ目的意識が薄められ「走る喜び」という過程に集中できるからなのではないかと考えている。

このことは敢えて言葉にしてみただけなので本当のところはハッキリしない。
いくらか冒険的でスリリングな体験を潜在意識がただ闇雲に求めているだけなのかも知れない。
よく理性的に考えてみたらこんなに阿保らしいことはないという程に無益な行動なのである。

全く無意識にバイクに乗ることを「楽しいこと」と思い込んでいるだけなのかも知れない。
駐車場の片隅に停めてあるオートバイの美しくも勇ましい姿を眺めているとついつい乗って見たくなるものなのである。
それを運転し操作できる能力を自らが所持していることを証明したいのかも知れず、クルマに比べその意外なほどの難しさを体験することで何かを克服したという喜びを感じたいのかも知れない。
少なくともとりあえず無事に帰りついた時の喜びはクルマの運転後のそれと比較しても比べものにならないくらい愉快なレベルではあるのだ。
冬の夜、それはだいたい午後8時過ぎ。
最近では夕方より夜が良い。
特に冬は。
何故なら当地、日本の九州でも夕方の6時にはすっかり帳がおりて真っ暗なのであるから夏の夕方のように夕暮れを楽しむということは全くできないからである。
冬の夕暮れは元々暗いんであるからどうせなら午後4時から8時という交通事故の多い「魔の時間」を避けたい。

思い切って防寒する為に極暖というヒートテックを2枚重ねて起毛したパーカーの上にダウンジャケットを着て、その上にバイクジャケットをはおる。
防風の効いた最外側部の衣類の下にいくつもの空気の層を作ることが防寒のコツである。
特に胸元と頚部への冷たい風の侵入は何としても防ぎたい。

いくらか宇宙服にも似た防風防寒対策をして大型のバイクにまたがると丁度大戦中の戦闘機乗りのような按配になる。
それはそれで気分が高まるものである。

色々な防寒の作業というものもバイク乗りの楽しみではあるのだ。
5月頃、暖かくなってから乗ることを好む人も多いが個人的に暑いという感覚はバイクに乗ることの喜びを減じるので夏にはあまり乗りたくない。
夏であれば夜とか山とかとにかく涼しく感じる状況が好ましい。
そのうえ夏場はどうしても軽装になりがちなので恐怖感が暑さと重なって不快さを増してしまうのだ。
平凡な日常をいくらか哲学的に彩色してくれるオートバイという名の長いトモダチをどうしても愛さずにはおれない。

ありがとうございました
M田朋玖



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