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■ 健康本 | 2017.12.14 |
本屋に行くと必ず「健康本」という分野の類を見てまわり、時々購入する。 実のところこのジャンルの本は、ホントは物凄く買って読むのに抵抗がある。 それでも敢えて読むのは仕事だからである。 軽い使命感と言っても良い。 さまざまな健康法について知悉しておくのは職業柄ひとつの義務と考えている。 それでテレビでもこの傾向の番組はとりあえず録画しているが、結果的にあまり観ていない。 基本的に好きではないのだ。 ついでに医者ドラマは殆ど全く観ていない。 病院とか白衣とか病室とか、特に救命救急などを観ると強烈なストレスを感じる。 時には気分が悪くなる。 ドキドキする。 その点では、健康本は為になるし面白い。 最近は食生活についての本が多い。 ダイエットも運動より食事に重きをおく作品が多くなっている。 これは正解である。 色々な食事法、栄養についての知識・情報を得ていると時々不思議に思うことがある。 それは、人間は草食動物、肉食動物のいずれか。 或いは雑食動物とする人もいるが、いったいどちらだろうか・・・という疑問である。 たとえば競走馬などの見事に美しく素晴らしい肉体を眺めていると感動するが、それは主に新鮮な馬草だけで得られた肉体とすれば「凄い」とつくづく思うのだ。 ご存知のように動物の肉体はその殆んどが蛋白質でできている。 それで蛋白質を多く含んだ食品を食べなくても立派な筋骨隆々とした肉体が維持獲得できるということに感動するのだ。 最近のサプリメントの宣伝とか栄養についての本や雑誌を読んでいると、どうも変だなあと思えるのがこの「馬」の姿を見る時に心の底から湧き上がる或る種の違和感なのである。 蛋白質が足りないとかビタミンが足りないとか野菜が足りないとか・・・そもそも人間の食べるべき食材、食品というのはいったい何であるのか。 理想の健康的食事というものはどういうものなのか心から知りたいと思っている。 残念ながら筆者は研究者ではないし科学者でもない単なる町医者である。 それでも35年以上にわたる経験の集積があるので何となくカラダに良い食品とか悪い食品とかは分かるし、心の中にもカルテ上もデータ的に残っている。 それらの経験値と読書で得られた知識を総合的に、演繹的に統合して導き出された結論みたいな情報はあるので、あらためてそれを書き記してみたい。 第1に人間は肉食動物ではない。 それは自然界の動物の観察で誰にでも理解できることだ。 ご存知のように肉食動物の歯は犬や猫をはじめライオンや虎などすべてトゲのように尖ったキバ状になっている。 人間の歯は明らかにそれらとは違う。 人間の長寿は肉食によって得られたという論を説く人がいるが、この歯の問題と肉食動物の短命はどう説明するのか。 そこを知りたい。 第2に人間は草食動物かというとそれも違うようだ。 草食動物に近い歯は持っているが明らかに牛や馬や鹿やウサギの歯とも異なる。 一種独特である。 敢えて言うなら猿やチンパンジー、ゴリラに似ている。 彼ら(?)が吠える時の歯の形状を時々見かけるが人間のように前歯の一部がキバ状になっているようだ。 肉食動物の気が何%かはあるようである。 察するところ雑食と見ることができるが、この雑食というのが一番難しい。 だから悩むのである。 テレビの番組やコマーシャルなどを観ているとこのあたりのことが少しも整理されて説明されない。 アメリカの有名な医学書、たとえばハリソン内科学などをいくら丹念に精読してみてもここら辺のことは何も書いていない。 痛風という病気には何を食べていけない・・・などというとてもポピュラーな簡単なことすら書いていない。 「医学」というのはその程度のものなのだ。 ・・・学問として片手落ちも良いところだ。 だから本屋に言って読む健康本の知識というものが日常診療で得られる貴重なデータ集積と同様に大事なのである。 それでも栄養の蛋白質、ビタミン、アミノ酸云々と言われても、ただちに肯定するワケにはいかない。 何故ならイメージとして「馬」の問題と雑食の問題がどうしても残るからである。 第3に長寿健康の人はどうも肉を少し食べているらしい。 これは当科でも確認済みである。 それがどの程度なのかは不明である。 絶対的に食べなければならない食品があるが、それは野菜である。 難病の人、悪性の病気の人に野菜を食べない人が多い。 それと加工肉だ。 ハムやソーセージなどの常食は変性疾患の人が多い。 変性疾患とはパーキンソン病、脊髄小脳変性症、アルツハイマー、ハンチントン病、ピック病などがある。 これらのややこしい病気の人に加工肉を食べる人が極めて多い・・・というデータが少なくとも当科にはある。 これでは常食するドイツ人はどうなるのかと考えられるが、製造の工程、過程をよく知らないので不明であるが、少なくとも日本で普通に食される加工肉については危険な食品であるととりあえず断言しておきたい。 母親が存命中から買いためてあった数々の「健康本」をあらためて読んでみるとデタラメな内容もあるが比較的まっとうな物もある。書いた本人が結果的に短命だったというケースも数知れない。現在出回っている本の中にもそれらの割合が相当マシになったが、それでも何となく腑に落ちない内容が散見される。 多くの健康本も医療関係者のそれも含め何かしら「一辺倒」な内容の作品を信じてはいけない。一辺倒であるから。 それにしても神様はいったい人間に何を食べさせたいのだろうか? 大昔から偉人で長命と言われる人々の伝記や評伝を読むと少なくとも皆さんがた殆ど少食家であるようで、大食漢だったという情報は得られていない。 大食漢の方々は大概何らかの慢性疾患に罹患されており少食家よりも見た目が老けておられる。 結論的にはあまたの健康本もあくまで参考書に過ぎないと書いておく。健康長寿者への長年のインタビューでもどこかハッキリしない部分があって、我ながらいささか卑怯とも思えるが確信を以て断言出来ないのが現状である。それでも敢えて彼らの印象を一言で表現するなら「テキトー」というものである。高田純次というタレントさんがいるが彼の人の醸し出すニュアンスを健康法に例えて良いという感じのそれである。少なくとも何かしら極端な健康法に偏した人「一辺倒」な人は皆無だ。 ありがとうございました M田朋玖 |