コラム[ひとくち・ゆうゆう・えっせい]

コラム:ひとくち・ゆうゆう・えっせい

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■ ホワイトナイト2017. 7.28

福岡のオートバイの買い取り業者の名前だ。
メールでたまたまヒットしたので試しに無料査定を依頼したらいきなり電話がかかって来て7月24日の12時に来るからと割と強引に予定が決められ、その言葉のとおりバイクを積載できるトラックで月曜日の正午に現れた。
とりあえず「見せて下さい」と断ってから10分くらいブツブツ言いながら査定して、いったんトラックの運転席に戻り携帯電話で何やら10分くらい話していたが「○○万円です」と言われ、結構それは高額で満足できる数字であったので即断で売却を決めた。

我がカワサキNinjaZX14R(ABS)というのは結構人気があるようだ。
5年も乗って少しクタビレているのに・・・。
走行も2万5千kmでまあまあ、エンジンの調子や音と走りは絶好調ながら、医院の軒の下という野ざらしに近い保管場所の為に流石に美しいグリーンメタリックのタンクやボディ全体が微かに灼けている。

その美しいフォルムと走行性能にはいささかの未練があるものの、売却についての後悔は殆んどない。
何よりもあんなに愛していた筈のお気に入りのバイクを簡単に手放すなんて・・・。

この心変わりには自分自身とても驚いている。
オートバイなどお金さえあればいつでも買えるという・・・という風に自分に言い聞かせ、ここは一度リセットして一から出直そうと瞬間的に心に決めて決断したワケであろう。

それより心身共に落ちている体調の方がはるかに気になる。

今の自分には体力・気力はともかく大型のオートバイにまたがるほどの精神的なゆとりがない。
あきらかに何かに怖気づいている。
それを敢えて表現するならばある小さな事件をきっかけに生じた心の微かな波紋がチョコンと沼の岸辺の小石(オートバイ)に当たり一瞬でコロリと転げてしまった(売却)というような心象であろうか。

それは、あ〜こういう結末だったのかと思わせる出来事で、自分の中に鮮明に自覚し得心できる「立派な」理屈であるけれど、この微妙な心の流れを詳細に説明できるほどの筆力は今の自分にはない。
ただホワイトナイト(白い騎士)という買い取り業者の会社名も気に入ったし、担当の人の良さそうな査定士も気に入ったし、何よりも買い取り価格が気に入った。
それこそその場所、その時の気分を救ってくれる「白馬に乗った騎士」そのものであったのだ。

結果的に近々心の底に抱えていた表現のしようのない屈託は消え失せ、取り合えずホッと胸を撫で下ろしているところである。

少なくとも何か大きな力に導かれるように起こって来たオートバイ売却という結果は不思議なことに筆者の心を相当に軽くしている。

平成24年の6月に購入したグランドスーパーツアラー。
スズキの隼と同じく世界でも最高峰のスピードと安定性を誇る名車だ。
乗り心地も最高であらゆる回転域でスムーズに吹き上がるエンジン、車体のデザインはとても秀逸だ。
その上、乗り手の技術もそれほど必要としない所謂乗りやすいバイクである。
・・・にもかかわらず敢えて手放したのには或る種の恐怖がある。
最近になりクルマの運転にしろ、バイクの運転にしろ、特に理由はないのだけれど“怖い”と感じることが多くなった。
年令のせいであろうか。
身近に交通事故の話をしょっちゅう聞いているからであろうか。

友人知人の中には自転車同士の衝突で半身不随になるような重傷を負った者とか、自転車で転倒し頭部外傷と坐骨骨折の重傷を負い入院している者もいる。
自転車と言えば自民党の元幹事長で総裁経験者の谷垣禎一氏もロードバイクで転倒し、その怪我(頸髄損傷)の後遺症で現在も車椅子生活らしい。
有名オートバイレーサーのアメリカ人、ニッキー・ヘイデンも30代半ばで自転車によるトレーニング中の交通事故で惜しまれて亡くなった。

自転車は基本的に軽装で乗るし、混合交通の一般道では割と自由な動きをするのでかなり危険な交通手段なようだ。
オートバイも同じ2輪車であるけれど、フル装備(バイクジャケット、脊椎プロテクター、各関節プロテクター、フルフェイスヘルメットなど)で乗って慎重に運転操作をすれば余程安全だ。
自動車など硬い金属やプラスチック製の箱に囲まれていかにも前二者からすると安全に見えるが、事故の程度や車種(軽トラック、軽自動車)によっては油断していると危険極まりない。

交通事故というものが「今すぐそこにある危機」であって、ほんの些細な怪我であってもその程度、仕方によってはイヤラシイ後遺症に悩まされるものだと最近になってようやく心配するようになった。
何で急にそんなことを考えるようになったのか理由は分からない。
何かしら天の啓示のように頭の中に浮かんできたもので自分でも不思議な気がしている。

それでもカワサキW800というやや小ぶりなバイクは残していて、これには毎日のように乗っている。
どことなく郵便屋さん感覚だ。
酒屋さん配達用のホンダのカブ号、郵便配達のバイクの走る姿を見ていると心の中に「大丈夫」という安心感が湧く。
それこそホワイトナイトだ。

ありがとうございました
M田朋玖


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